第3回『おくる』:先へ

「先神は慈悲がなさすぎます」

 未来を救う現人神の姉様は、災害の源たる先神を素直に真っ直ぐ非難する。

「彼らに慈悲を」

 拒絶も痛みも辛さも知らず無垢な乙女を課された姉様は、絹の褥から無邪気に命じる。世話係の擦り切れた化繊の背が震え。許諾と諦念が部屋に満ちる。


 だから私は頷いた。


有史以前からとも言われる問題を科学が叫んで数世代。先人は表面ばかりを撫で回し、本質を器用に避け続ける。

 世紀間睡眠装置が閉じられて、姉様は使命の為に眠りについた。

「貴女が救うべき未来を」

 姉様を支えるコストは教団には重くなりすぎた。未来を救うのが使命ならば、無垢も乙女も艱難辛苦も先で解決されればいい。

 先送り。誰かの呟きを笑顔で受ける。

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