第3回『おくる』:先へ
「先神は慈悲がなさすぎます」
未来を救う現人神の姉様は、災害の源たる先神を素直に真っ直ぐ非難する。
「彼らに慈悲を」
拒絶も痛みも辛さも知らず無垢な乙女を課された姉様は、絹の褥から無邪気に命じる。世話係の擦り切れた化繊の背が震え。許諾と諦念が部屋に満ちる。
だから私は頷いた。
有史以前からとも言われる問題を科学が叫んで数世代。先人は表面ばかりを撫で回し、本質を器用に避け続ける。
世紀間睡眠装置が閉じられて、姉様は使命の為に眠りについた。
「貴女が救うべき未来を」
姉様を支えるコストは教団には重くなりすぎた。未来を救うのが使命ならば、無垢も乙女も艱難辛苦も先で解決されればいい。
先送り。誰かの呟きを笑顔で受ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます