第2回『甘い』:甘味成分の私たち

 スマートフォンが震えている。待ち受け画面の名前は『ショ糖』 持ち主はトイレに駆け込み出てこない。

「何番目?」

 グラスを拭きつつママが問う。

「二番、かな」

 私はショットグラスを弄びつつ。

 再びスマートフォンが震え出す。今度の名前は『ブドウ糖』

「三番目」

 ショ糖とブドウ糖が交互に並ぶ。『果糖』の文字は出てこない。だから私がここにいる。

「なんだっけ、スイートハニーの代わりとか」

「さぁね」

 三股かけてる恋人たちをそういう名前で登録している。そのことを私とママは知っている。

「やめちゃいなさいよ」

 クエン酸の私は、エタノールのママから目を逸らす。ため息がカウンターを滑っていく。

 ママはおごりと、私の前にキスチョコを置く。

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