虫歯

なんど治療しても、虫歯になってしまう...

ひょっとしたら、歯科医院が『リピーターにする』という目的で、

あえて、しっかりと治していないんだろうか?


そう、お考えの方は――。

当医院へ お越しください (^_^)/



***


さて、その前に『虫歯』について

少しだけお話をさせていただきます。


【虫歯になる人・ならない人】

ミュータンス菌が口の中にいるかどうかで、人生が判れます。


虫歯の原因の1つであるミュータンス菌は、生まれたときから持っているわけではありません。主に感染によって口の中に住み着きます。生後10ヶ月~36ヶ月くらいの間に、保護者(主に母親)から感染することが多いと言われています。


したがって、幼少期に保護者からミュータンス菌の感染がなかった人は、歯を磨かなくても虫歯にならないこともあります。


そのため、近年では虫歯予防のため「子どもに口移しで食べものをあげない」などの指導が保護者に対して行われています。


また、「哺乳瓶う蝕」や「母乳う蝕」による虫歯リスクの向上があげられます。

どちらも マメに 消毒をしておかないと

赤ちゃんが虫歯になってしまう可能性が高くなると言われています。



それでは、本編をお楽しみください (*'▽')ノ



*・゚・*:.。.*.。.:*・゚☆*…


「虫歯治療、たったの3分?」

「嘘くせぇ~。

 こんなPR動画に引っかかる奴なんているのかよ?」

「いねェ、って。ハハハハハ」


大学生たちが女性にスマホを見せて、合コンで盛り上がっていた。


この年齢にまで成長すると、虫歯の1本や2本はあたり前ですよね。

おや? あちらの女性は【おしぼりアート】に夢中のようです。


あぁ、これはきっとアヒルさんですね。


「ねぇ、カナちゃんもそう思わない?」

とつぜん話を振られたカナは、微笑みを浮かべて大きくうなずいてみせた。



ですが、彼女には「大きな秘密」がありました。

それは【虫歯の本数】です。



中学,高校と部活動を夢中で頑張ってきた彼女は、

いつもご飯を食べた後は 歯磨きもせずに、

意識を失うかのように、そのままベッドに倒れ込んでいたのです。

そのせいで、虫歯がたくさん出来てしまいました。


大きく口を開けて笑いのですが、治療した歯が多すぎて、

他人に歯を見せることに抵抗を感じていたのです。

そのせいで、陰キャだと多くのひとに勘違いをされていました。



*・゚・*:.。.*.。.:*・゚☆*…



「やっぱり3分40秒って、きちんと表記すべきですよ」

「せんせ~。たかだか40秒なんですよ。詐称罪にもなりゃしませんよ。

 ねぇ、蜂羽さん」


平井歯科医には、ふたりの歯科助士さんがいました。

ひとりは、背骨がやや曲がった おばちゃん体型 の玉田さん。

もうひとりは、しゅっとした目鼻立ちの蜂羽さんで、

――北川景子さんに似ているとよく言われる、と本人はいつも言っております。


「すでに、予約は20年先まで いっぱい です。

 このPR動画は、すぐに削除してください」

「ちょっと、ヤダぁ。

 蜂羽さんったら、イケずねぇ~」


「おっしゃる意味が分かりません!」

「ちょ、ちょっと待ってください。

 ケンカは、喧嘩は良くないですって――」


「だったら。どうする、お・つ・も・り・ですか?

 ドッペルゲンガーなり、分身なりを作ったりでもして?

 さらに、集客率を上げるおつもりですか?」

「いやいや。さすがに、それはブラック企業の発想でしょう」


「そうよ。さすがに、せんせ~でも それは無理じゃない?」

「無理じゃないです。やってください」


「は? いや、ちょっと君。さすがに、それは―――」

「お給料が少ないです。ボーナスも」


「え? 月々32万円じゃ足りないのかね?

 ボーナスだって、1年間で200万は出してるじゃないか」


「吹けば 飛ぶような金額はボーナスとは言えません」

「そうねぇ。もうちょっと出してもらえれば、助かるわねぇ~」


1日の収入はこうである。

患者12名 × 治療費5万円 × 月間20日 = 1,200万円


機材費や税金、その他もろもろの経費を考えなければ、

もっと給料をあげても良いと思える状況ではあろうが……。


平井は頭を悩ませた。


確かに彼女たちはよくやってくれえている。

レントゲン技師の免許まで取得しているのだから、

世間一般には、もっと出すべきだ、と言われても仕方ないと思っていた。


ただ。


………………ただ。


彼女たちは【ドタキャン】が多いのだ。

玉田さんは主婦ということもあり、出勤しても、気が付けば帰宅。

蜂羽さんは患者に愛想が悪いうえに、自分の仕事を事務員に振る癖がある。


この前も、レントゲン撮影を、事務員の牛鳥さんに やらせていた。

こんなのが、世間にバレでもしたら 即 営業停止。

いや。営業という表現は、おかしいか?――


やはり、素直に給料を上げるわけにはいかないのである。


当医院の売りは『魔法処置』であった。

そのことを知らない患者は、一般的な処置を求めてくることもある。


年々、一般的な処置の技術力が落ちている医院長にしては、

常に【訴訟】が脳裏をよぎっていたのである。


言ってしまえば、(( (ガタブル) )) なのである――。


「そうは言ってもね、蜂羽くん――」

「あ、せんせ~。お昼休憩、終わりです」


「あ、そうね。それじゃ、患者さまを呼んでくれ」

平井は給料の話をひとまず終えて、ほっとした。


「光楽 カナさん。お入りください」


玉田さんが案内したのは、活発そうな女の子だった。

ただ、見かけによらず下を向いてた恰好で、さらにお辞儀を繰り返した。


「本日は、どのような処置をご要望でしょうか?」

「先生。まずは、症状をお訊ね下さい」 蜂羽さんが鋭い視線を向ける。


「おほん。当医院は魔法によって、大体の病気は完治できます。

 ですが、一般的な処置のほうは。。。ゴニュオ ゴニュオ」

「せんせいッ!」


「あ、すみません💦

 えっ、と。光楽さんは、どのような症状でこちらに来られましたか?」


平井は、改めて少女の方を向いて話しかけた。


「その、虫歯がおおくて…ち、ちりょうを……」

「あぁ、そうですか。

 では、お口を大きく開けてください」


光楽さんは、恥ずかしそうに小さく口を開けた。

すると、口臭が室内に漂ってきた。


「くっさッ!」 蜂羽さんが思わず声を出してしまった。


「ス、スミマ……せん」 彼女は慌てて、口を閉ざしてしまった。

「あぁ。光楽さん」

そういうと、平井はおもむろに土下座をした。


「申し訳ありません。

 助士が、たいへん 失礼なことを言ってしまい、

 まことに、

 誠に申し訳ございません」


「え、いや。そん……はい………」

かっぼそい声で光楽さんは何かを言っていたが、

ぜっさん、土下座中の平井には、まったく聞こえてこなかった。


「医院長、顔を上げてください」


蜂羽さんの言葉におもわず、なんでお前がそんなことを言うんだよ、と

ツッコミを入れてしまった。


「光楽さん。まずは、口腔内の洗浄をしていただきます。

 こちらの『うがい薬』で、お口をゆすいで下さい」

「………………」


手渡された紙コップを見て、光楽さんは固まってしまった。

すこし揺らぐと色が変わる水は、とても普通には見えなかったのである。


「1分ほど、ぐちゅぐちゅして下さい。

 そうすれば、虫歯菌は死滅します」

「ほへぇ」


光楽さんは驚きながらも、口をゆすいだ。

すると、あっという間に息がスッキリとした。


「では、お口を開けてもらえますか?」


平井がお願いすると、彼女は口を開けて中をみせてくれた。


「ひい、ふう、みぃ……。

 全部で、20本ですか。こりゃ、骨が折れるな」


「………………」

泣きそうな顔で、平井を見つめた。


「虫歯の治療は、1本につき1万円になります。

 もちろん『魔法処置』のお値段ですが。。。

 まぁ。面倒なので、1回で済ませましょう」


「で、でも。わたし、そんなにお金を持って来てないです」


光楽さんは、顔色を青くして訴えてきた。

それを平井は勘違いして、こう言ってしまった。


「お怒りは、ごもっともです💦

 こちらの都合で、まとめて治療だなんて

 たいへん申し訳ありません!

 もちろん、1万円ぽっきりで大丈夫です。

 サービスとして、犬歯の方も歯列矯正をさせていただきます!

 どうか、どうかご容赦に!!」


平井は椅子から降りるや、再び土下座をした。


「え………いや………。………です」

「デス(死)、よねぇ~」


平井は滝のような汗を流しながら、次なる提案を出した。


「わかりました。

 では、こちらの『うがい薬』を1年分お付け致します!」


とそこまで言ったところで、

「この病院、潰す気ですか!」と 蜂羽さんの ハリセンが舞った。


「ほへぇ」


その後、光楽さんの口の中にある銀歯を すべて取り除いて『魔法処置』をした。

虫歯菌によって溶かされた歯は、すべて元々あった形へと戻り、


彼女は、ふたたび 大きな笑顔を 取り戻したとさ―――。



🦷 めでたし めでたし 🦷



*・゚・*:.。.*.。.:*・゚☆*…

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