【完結】歯列矯正は『魔 法 で 3 分』の時代です!

越知鷹 京

歯列矯正

あなたは、歯列矯正の相場をご存知でしょうか?


「マウスピース矯正」10万円~100万円

「ワイヤー矯正」と60万円~150万円


費用は、現金一括払い or 分割払いとなります。


現金一括払いは、最も安く済む方法です。

金利も発生しませんし、手数料といったものもありません。

※ですが、途中で止めても返金はされません。


分割払いは、歯科医院側が独自に提供している支払い方法です。

院内分割払いと呼ばれることもあり、その医院によって支払いルールは異なります。


この料金の適正価格は、公益社団法人「日本矯正歯科学会」が取り仕切っています。



診断料,カウンセリング料に 調整料・処置料 などなど


歯科矯正治療完了後にかかるお金も とうぜん、発生します。



***


「――ですが、当医院では時間を掛けて処置することをオススメ致しません」

平井修は、患者の顔に ずずっと顔を近づけた。


テンプレを読むように、感情はこもっておらず...というか、、、


むしろ、

絶対に従来の処置を選択するなよ、といった顔で迫っていった。


「ですが、先生。

 その。例の裏治療といいますか……

 ほんとうに、魔法で治療、なんてできるんですか?」



平井は、にかり と笑うとパンフレットを見せてた。


「こちらをご覧ください。

 たしかに、『魔法なんて非科学的な処置なんてありえない』と

 おっしゃる方は多くおりますが、私なら可能です!


 というか、従来の施術の方が面倒なので、こちらを選んでください」



そういって、患者に土下座をしはじめた。


「せ、先生! やめてください!」

「では、こちらの『魔法処置 歯列矯正法』でよろしいでしょうか?」


患者は、なおも怪訝な顔で医院長の顔を見た。


「その、魔法処置というのは、どれくらいの時間が掛かるんですか?」

「3分ほど、お時間を頂いております」


「は??」


「🦷ですよね。そうですよね。

 こちらのパンフレットにも書いておりますが、

 先ずは、お顔全体を3Dスキャナーでパソコンへ取り込ませていただき、

 その後、MRIとレントゲンにて

 さらに立体的な情報収集をさせていただいております」


「はぁ」


「その情報を元に患者さまの治療後の顔を制作させて頂いているんですよ。

 歯並びや噛み合わせの状態によって、選択肢が生じてきます。


 1つは、全体的に見て他よりも大きな歯を魔法によって、

 小さくして、納まるスペースを確保して整えたあとのお顔のイメージを


 2つめは、頭蓋(とうがい)各部の調整を魔法で処置。

 下あごを 大きくしたり小さくしたり して

 納まるスペースを確保して整えたあとのお顔のイメージを―――」


「いやいやいや。さすがに有り得ないでしょ、そんな方法」

「私、こう見えて。

 転生前は魔法使いでしたので、可能なんです」


「・・・・・・・・・マジで?」

「マジです」



平井は、満面の笑みで応えた。

ここまで下手に出られると、逆に怪しいというものだ。


人づてに噂をきいてやってきたのだが、

あとで、高額請求なんて、ことはないだろうか?


患者の顔は七変化をして、答えを出せないでいる。

そこへ、追い打ちとばかりに従来の歯列矯正によるデメリットで

患者の気持ちを捕らえようとした。



「長時間の矯正により、黄ばんでしまう🦷

 ブラケットの跡がのこる🦷

 なんて、当たり前。

 せっかく歯並びが綺麗になっても、気になってしまう方が多いんですよね。


 ですが、ここは魔法!

 施術時間は、たったの3分なので

 そのような跡は、残りません!」



医院長が熱弁を振るう中、歯科助手が声を掛けてきた。


「先生。すでに20分が経過しています。

 次の患者さんの診察に響くので、はやく決めてもらってください」


「だったら、君が説明すればいいだろ!」

「・・・魔法を説明できるのは、先生だけですよ!」


ぐうの音もでない、とはこういう時につかうのだろう。

医院長は両手を合わせて、拝むように縋ってきた。


「お願いしますよ!

 ね、この処置に決めましょうッか!

 これ、この通り」


といって、再び 土下座をしようとするので、

患者は慌てて、承諾をした。


これじゃ、どっちが上の立場なのか分かったモノじゃない。


「よし! 簡単な処置 GETッ」


患者は、平井に言われるがままに撮影室へと入って行き、

アッという間にMRIまで終わってしまった。


しばらく待つ事となり、テレビを見せられていると

歯科助手が声を掛けてきた。


「処置後のお顔なのですが、どちらがお好みでしょうか?」


「えっ…と。

 前から前歯が大きいと感じていたので

 こっちの方でお願いします」


歯科助手は患者が指した画像を確認すると、医院長へと歩いて行った。


「あと10分ですよ。さっさと終わらせてくださいね、先生。

 あぁ~。また休憩時間が減っちゃうじゃないですか~」


患者に聞こえても、お構いなしで愚痴っている歯科助手が怖いと感じた。

本当に、この歯科医院でよかったのだろうか?


慌ててやってきた平井が、哀れにも思えた。


「では、さっそく『魔法処置 歯列矯正法』を始めさせていただきますね」

「お願いします」


顔が温まっていく。患者は、気持ちよくなり ウトウトとしてしまっていた。


「はい。終わりました」


平井は患者に自分の顔を確認してもらうために、大きめの鏡を用意した。


「うわっ。スゴっ!!!」

そこには、ふぞろいだった前歯や犬歯がキレイに並んでいた。

顔全体も確認すれば、本当に提示してきた3Dモデルの顔になっている。


「お気に召しましたのなら、以上で処置を終わります。

 お疲れ様でした」


「あの! 本当にこのお値段でいいんですか!?」

「はい。こちらの処置は保険適用外ですので、

 少しお高く感じるかもしれません――が、

 1年間の保障もさせていただいております」


患者は、ふたたび自分の歯並びをみた。



「これだけの技術力で、5万円って、マジすげぇ~」

「技術ではありませんよ。ただの “魔法” です」


患者の大切な1時間を頂いた平井は、

最後の処置として、患者さまに笑顔を送った――。



🦷おしまい🦷

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