第三・五章
ナオミ再び
Side ゴーサイバー
街中で繰り広げられる無差別な破壊活動。
闊歩するリユニオンの戦闘員達。
その指揮を取る怪人。
成す術も無く逃げ惑う市民達。
――しかしそれもスグに終わりを告げた。
『サイバータンク投下』
『サイバーマシンスタンバイOK!』
空を切り裂くような飛行機雲の軌跡を作りながらサイバージェットがやって来る。
地面近くスレスレまで飛ぶと、大型の輸送機とは思えない安定性と共にそして飛行メカ下部に搭載したサイバータンクを切り離し、続いて後部の格納庫ハッチから四台の流線的なフォルムのオフロードバイク――サイバーマシンが飛び出した。ゴーサイバー達の専用マシンとして開発された。
ゴーサイバー達が地上を高速移動する手段としてはブーツに搭載された電子クラフトがあるがなるべくスーツの消耗を抑えるためにと開発されたのがこのサイバーマシンだ。
最高時速600K/mオーバーのモンスターマシン。
プロのレーサーでも扱いが難しく、スーツとの連動補助が無ければ免許取り立ての新米ライダーの彼女達では到底扱いこなせない代物だ。
『今回はサイバータンクも導入するんですか?』
『まぁ敵の規模も大した事ないから色々と試験も兼ねてるのよ』
『馴れって恐いわね・・・・・・』
『芳香の言う通り』
と口々に言葉を交わしながら戦闘員の群れを切り裂くようにバイクで突っ込む。
轢き飛ばされた戦闘員達は錐揉み回転を起こしながら次々と奇声を上げて吹き飛んでいった。
続いてサイバータンクの砲門が火を噴き、あっと言う間に戦闘員の集団が壊滅する。
戦いは概ねゴーサイバー達の理想通りに進んでいると言えよう。
「おのれゴーサイバー! まさかこれ程の力を付けていたとは・・・・・・」
と、悔しがるリユニオンの怪人。
ゴーサイバーは度重なる実戦と訓練を積み重ね、相応の実力を持つに至っていた。
この後の戦いがどうなったかは最早詳しく書き記す事も無いだろう。
文句なしの大勝利だ。
Side 工藤 順作 司令
戦いに安定感が出て来て、事後処理にも馴れてくると安らげる時間も増える。
それは多忙な司令官も同じだった。
なので彼は合間を縫い、貴重な休息の時間を潰してでもとある場所へ足を運んでいた。
何せ戦いの行方を左右するかも知れないような代物である。
是が非でも行かなければならない。
「このプロトタイプもよく残っていたな」
司令である工藤 順作と戦術アドバイザー寺門 幸男の二人はあるスーツを眼前に捉えていた。
ゴーサイバーのスーツであるが真っ白い、何処か年季が漂っている味気の無いカラーリングであるのが特徴だ。
これはゴーサイバーのプロトタイプスーツ。
全てのスーツの元になったゴーサイバーの原型となったスーツだ。
複数体分のスーツを確保できるようになってからは倉庫の片隅に保管していたのだがそれを引っ張り出し、予備パーツを組み込んで最近の戦闘データーをインストールして内外共にパワーアップさせた物だ。
過去に何度か言っているがゴーサイバーは戦力不足である。
イザとなればセイバーVに助力を頼む事も出来るが何時も救援が出来るとは思えない。
だから少しでも戦力を確保しておきたかった。
そこで思い出したかの様にこのプロトタイプスーツの存在を思い出したのだ。
「さて問題は誰が装着するかだが――」
「プロトタイプスーツは基礎的な性能では先の六体や現在急ピッチで開発しているシリーズに迫る性能ですが固有武装はありません」
「新たに開発する必要があるか・・・・・・」
「その時間の余裕がある事を祈りましょう」
「そうそう。ところで達也君の事だが」
「ああ、彼の事ですが――」
Side 楠木 達哉
不気味なぐらいに静かな市街地。工事現場で置かれている立ち入り禁止の仕切りで十字路の交差点が四角い空間として形成された奇妙な空間。
そこでサイバーレッドに変身した達哉は一人戦闘員達と戦っていた。一対複数の不利な状況。敵の武装は様々だ。
それでも達哉は身体を動かして次々と敵を屠っていく。
(これがバーチャル訓練か・・・・・・)
今達哉が行っているのは最新鋭の科学技術を使ったバーチャル映像による訓練だ。
アメリカ軍ではまるで巨大なアミューズメントパークの様な訓練を行っている。それはこのゴーサイバーでも同じらしく同様の訓練施設があったのだ。
ヒーローに凄い感心が高い今の時代にこの施設を商業施設として解放すれば凄い集客を呼び出せそうな物だが――それはさておき達哉はゲーム感覚で次々と敵を倒していた。
(やっぱりゲームだよな・・・・・・)
確かに実戦とゲームは雲泥の差はある物のしないよりかはマシだ。
ちなみに自分を除いた他の四人もこの訓練施設を多様しているらしく、本来装着者になる筈だった人々に負けないぐらいのハイスコアを叩き出しているらしい。
(僕も負けてられないね――)
とは言う物の達哉はリハビリ程度のトレーニングしか受けてこなかった身だ。今の調子だとメンバーの中では最下位で終わるのは予想するに難くなかった。
それでもまぁ今発揮できる実力を全力で出そうとしている辺り精神的な成長が窺えるが――
=TIME OVER=
時間終了を知らせるブザーと共に文字がバイザーに映し出された。
『お疲れ様。今映像を切るわね』
そう言うとバイザーの景色が映り変わり、外が無機質で真っ白い部屋へと早変わりしていた。
先程までのバーチャル映像がカットされたのだから当然映し出されるのは本来の景色である。特に達哉は驚いた様子はなかった。
強いて言えば楽しい夢から覚めたような寂しさを感じる。
フウッとヘルメットを被っている事を忘れて額の汗を拭う動作をしつつ部屋から出た。
Side 工藤 順作司令
「と……最初期よりマシになりましたがまだまだ求める水準には達していません」
「だがそれは……」
「ええ、仰りたい事は分かります。本来ならばあの少女達も同じなのですが……一番の問題は連携訓練も遅れているところです」
「ふむ……しかった無かったとは言え、彼だけにリハビリトレーニングさせたのが失敗だったか」
「いえ、どちらにせよリスクがあります。それに楠木隊員の場合は精神面にも問題を抱えていますから」
「それも改善傾向にあると聞いているが?」
「どちらにせよ連携訓練などをミッチリ積ませなければ返って戦力低下を招きかねません」
「確かに……危険な博打はしたくはないな」
達也の実績は二人とも知ってはいる。
だがそれを当てにするのはとても危険だと言うのが共通認識だった。
Side 楠木 達也
華特高校の駐輪場は朝の登校時間と言うだけあってとても賑わっていた。
そこに二人の少年の姿があった。
一人は線が細い頼りなさそうな男の子。もう一人はニット帽がトレードマークな少年だ。
「へ~そんな訓練があるのか」
「うん・・・・・・と言うか浩君バイク持ってたんだね」
流線的でそのままレースに出れそうなカッコイイフォルムのバイクだ。
珍しく一人で登校した達也は校門で偶然バイクに跨がった浩と出会い、そのまま駐輪場にまで付き合って今に至るのである。
「昔バイクヒーローに憧れてね。その影響で高校に入ったらアルバイトして絶対免許取得して買ってやろうと思ったんだ」
と言っても中古の易いモデルだけど、浩は照れ臭そうに付け加えるが達哉は努力して欲しい物を手に入れた彼に対して尊敬の念を抱いていた。
(そう言えば一応僕もバイクに乗れるんだっけ?)
ゴーサイバーの訓練過程で専用マシンであるバイクの操縦方を習い、その過程で運転免許を取得している。
戦闘服を身に纏わないとリミッターを掛けなければプロのレーサーでも操縦が難しいような中々にデンジャーなモンスターマシンであるが馴れればレースゲームに出て来るようなスーパーマシンを操っているような爽快感を味わえた。
もっとも扱いこなすにはまだまだ慣れが必要であるが。
「お、おはよう・・・・・・」
「あ、おはよう」
「おはよう」
と、一人の女子生徒が近付いて来る。
達哉はどうとも思っていないが浩は声に出さないが何だか最近周りに女っ気が増えてラッキーなどと考えていた。何だかんだ言っても浩は健全な男の子なのである。
「何かナオミさんって人からこれを渡してって頼まれたんだけど」
「ナオミさんってあの、ありえないくらい胸が大きい金髪美女だよな?」
「う、うん……」
たぶん偶々目に入った女性徒を持ち運び人にする辺り、何だか彼女らしいなと思う。
どうしてだかは分からないが達也はあの映画の世界でしかお目に掛かれないようなスパイレディと接点が深い。と言うかあっちから勝手に関わって来る。それを見て薫や芳香などの女性陣が冷たい視線を向けてくるので少年にとってはいい迷惑だった。
後、男としての理性が磨り減る。
「何々? 手紙?」
とても手触りが良く、ハートのシールで封がされているラブレターに見えなくもない手紙だった。
おそるおそる中を開けてみるとそこには日時と場所が記されている。
「なぁ……これって?」
「デートのお誘い?」
☆
「で? どうして僕はここにいるのかな?」
始まりは校門にナオミ・ブレーデルが来た時から始まる。
引っ張り出されるように拉致られて、何時ものスポーツカーに放り込まれ、そのまま暫く一緒に乗っていたら高そうなホテルまで連れて来られた。
そしてそのまま最高級のスイートルームらしき部屋まで案内された後、水着を渡されてプールにまで引っ張り出された。学校のプールよりも幾分か狭い個人用のと言った感じだ。ガラス張りの窓からはサンサンと太陽光が降り注ぎ、部屋を満たす空調はプールに入るのに適した温度に調整されている。
と、ここまでの事を思い出しながら達也は「誘拐の教科書」に乗せたいぐらいに鮮やかな手口に苦虫を噛み潰したような気持ちになる。
「だってぇ~ここ最近冷たかったし。だから思い切って誘ってみたのよ」
と、ゲームかアニメぐらいでしかお目に掛かれないような凶悪な黒いスリングショット(分からなければV字水着で構わない)の水着に着替えたナオミ・ブレーデルが嘘泣きのポーズを取りながら語っているが男としてどうしても胸の凶暴な果実に目が行ってしまう。明らかに100cm越えの非常識な胸と凶悪水着の組み合わせは最早放送禁止レベルな男の本能大量殺戮マシーンと化している。
これで反応しなければ病院に行った方がいい程の殲滅力だ。
「・・・・・・眠たいから寝ていいですか?」
「こんな所で寝たら私変な気起こしちゃいそうだけど・・・・・・」
「からかわないでください」
「男だったら何でもいいって言う訳じゃ無いのよ?」
「じゃあどうして僕なんですか? 他にもいい男は幾らでもいるでしょうに・・・・・・」
「私こう見えても年下もいける口なんだからってのはダメかしら?」
「冗談に聞こえないです」
「も~人と会話する時は目線を逸らさないの」
「その姿をどうにかしてから言ってください」
ずっと直視していたら本当に変な気分になりそうだ。
何かもルート確定してしまいそうな気になる。
「達也君!!」
と、ここで聞き慣れた声がした。
「かお――る・・・・・・」
振り向くとそこには確かに桃井 薫がいた。
ボブカットにハートのブローチがついたヘアピン、可愛らしい年相応の顔立ち。十五歳らしい胸の膨らみ。そんな少女に相反するように引き締まった感じがする四肢――恐らく過酷な訓練でそうなったのだろうが問題はそこではない。
着ている衣装が問題だ。
女性の秘処を最低限までしか隠せていないピンクの水着を着ていた。正気の女性なら絶体付けられない程に露出している女殺しの紐ビキニだ。
「ここに辿り着いたら何か綺麗なお姉さんに水着渡されて・・・・・・これを着たら彼氏さんはきっと喜びますよとか言われて・・・・・・」
と顔を真っ赤にしてビキニを恥ずかしげに見せつける様にしてモデル立ちをする薫。視線は流石に羞恥心があるのか顔を達也から背けている。
「それで素直に着たのか・・・・・・」
「え? 達也君が選んだんじゃなかったの?」
「選んでない!!」
そこは絶体否定しておきたかった。
「ちょっと達也!! 薫の水着どう言う事!? ってええええええ!?(ナオミを見て驚愕する)」
「・・・・・・芳香、たぶんこれはあの人の罠――ッ!?(ナオミの方を向いて固まる)」
芳香が怒り、麗子は呆れながら現れ、ナオミの方を見て固まった。
「佐々木さんの言う通りね・・・・・・ってその水着姿はちょっとエグ過ぎるわよ!?(ナオミを見てツッコミを入れる)」
最後にマリアが現れ、ナオミの方を見てツッコミを入れる。
全員自分と同様のリアクションを取ってくれたのに安心感を覚える達也であった。
ちなみに芳香は普通の水着。
麗子は体のラインがクッキリと浮かび出る競泳水着。
マリアは自分の巨乳に合うサイズがそれしか無かったのか黒縁がついた牝牛柄の水着を着ている。これで頭に牛の角でもつければ色々と完璧だったろう。
「そ、それよりも楠木君!! 貴方どう言うつもり!? またホイホイとこの人にくっついていって・・・・・・」
マリアが顔を真っ赤にしながら達也に叱り付ける。
「あら? 部隊内の親睦を深めるためにちょっと手助けしたつもりなんだけど?」
「余計なお世話です!!」
怒りながらマリアはナオミに怒鳴りつけた。
「まぁそんな事より、折角来たんだから皆で一緒に達也君を(自主規制)しましょうか♪」
時間が停止した。
ザ・●ールドのスタ●ドを使ったとかではなくて。
暫くの間誰も言葉を発する事が出来なくなった。
それを良い事にナオミは更なる爆弾発言を行う。
「じゃあ薫さんと私の二人で・・・・・・ね?」
「え? た、達也君がいいって言うなら・・・・・・」
何故かナオミの言う事に薫は納得して達也に目配せする。
「え・・・・・・え? 何この話しの流れ?」
そして時は動き出す。
長い黒髪を逆立て巨乳を揺らしつつもマリアが真っ先に止めに入った。
「ちょっと! 堂々と不純異性交遊はしないで!?」
「そこに愛と節度があるのなら別にいいんじゃない?」
「よくない!! 絶体によくないわ!!」
大人二人の会話がヒートアップする中、すっかり置いてけぼりになった二人はと言うと――
「はぁ・・・・・・麗子? どうする?」
「・・・・・・せっかくだし泳いで帰る」
「適応力あるわね」
麗子はその場の流れに身を任せる事を選んだ。
芳香も同じ選択をした。
「達也君も・・・・・・ね?」
薫は達也の手を引っ張りながらプールに入ろうとする。
達也は視線を逸らしながら「いや、だけど」と口籠もるが、薫が可愛らしく顔を真っ赤にして「ダメ?」と言われて「はぁ――」と達也はもうどうにでもなれとこの場の状況に合わせる事にした。
こう言う「早く終わって欲しい時に限って」リユニオンは来なかった。
もしも狙ってやったのなら充分成果は出ている。
こうして再び再結集した六人はグダグダのままこのイベントを消化していった。
ちなみにナオミ・ブレーデルは何時の間にか姿を消していた。
まるで最初からいなかったかのように。
後日、達也はナオミに拉致られた事に関してまた絞られる事になるのだがそれはまた別の話である。
第三・五章END
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