第17話 探索者通り 

 ギルドを出た私はギルドとは反対側の通りに向かって歩いていた。


「うわぁ人がいっぱい。だめだめ、日向のプレゼントを買いに来たんだから頑張れ私!」


 自身に言い聞かせて人ごみの中に入っていく。やっぱり日傘をさしているのは珍しいのか見られるけどそれ以上の感情は感じなかった。


 もしかしてギルドの時みたいにみんな見慣れてるのかな。傘のせいで物理的に距離が開いていくけど……

 あ、すごい。いろんなものを売ってる。あそこは武器屋さんかな?ちょっと覗いてみよう。


「すみませーん、女の子でも使える武器ってありますか?」

「あん?いや、わりぃまさか女の子が来るとは思わなくてな。どういう武器が欲しいんだ?」


 店の奥から目つきの悪い人が出てきた。頭に布を被ってるスキンヘッドの男の人、ヤクザかな?でも、意外と優しそう?

 日向はどんな武器が使いたいんだろう?素早さを生かせる武器がいいよね……。あの大剣のやつとか日向持てないかも……


「軽くて動きやすい武器ってありますか?」

「そうだな……嬢ちゃんが使うのか?」

「あっいえ!友達に送りたくてですね……」


  日向のための装備なんだから言っておかないと。たぶん大きな武器はだめだよね。


「それだとそうだな……このショートソードとかどうだ?軽くて丈夫だ。使うのは女か?」


 すごく目が怖いけど私というか職人さんって感じ。真剣だからこその目つきかな。


「はい、女の子に送りたいんです。」

「……それだとこのショートソードでもきついか。身長は嬢ちゃんと同じか?」


 日向と私は同じくらい、それに体格も同じくらいかな。


「はい、素早さを重視してるみたいでそれを生かせる武器は無いかなって。ないですか?」


 店員さんはしばらく考えて結論を出したみたい。なんとなくないって言われそう。


「わりぃな、嬢ちゃんの欲しい武器は此処にはなさそうだ。おっと待て待て」


 私が店員さんに挨拶をして出ていこうとしたら呼び止められた。


「ここにはないが要望があればオーダーメイドでも作れる。尤もその時は友達を連れてきてもらわねぇとならんけどな。」

「いいんですか!?」


 忙しそうなのにお願いしてもいいのかな……いや、こういう時はご厚意に甘えた方がいいよね。


「わかりました!また今度二人できます。ありがとうございました。」

「おう、また来いよー………久しぶりに自分以外のために武器を買いに来る奴が来るとはな。大抵のやつは自分が強くなるために武器を買いにくるからな。」


(それが普通だが、仲間のためにってやつには手を差し伸べてやりてぇよな。)



「武器がダメってことは防具もダメだよね……。他に役立つものがないか見てみようかな。」


 歩いていくといい匂いがしてきた。ボア肉?ボアって確か猪の事だったような。


「あの、このボア肉巻きって何ですか?」


 私は店先で作ってる人に聞いてみる。少しびっくりされたけど普通に受け答えしてくれた。

 なんでも、レッドボアって言う魔物の肉らしい。魔物って食べられるんだ……


「美味しいよーただ、安定供給が出来るのがボア肉くらいしか無いんだけどな。」

「それは何でですか?倒せばお肉を手に入れられるんですよね。」


 スライムだって倒したらゼリーを落とすんだから供給は間に合いそうだけど。


「それがなぁ?ボア肉くらいなんだよ、倒しても肉を落とすのは。他の魔物は倒してもツノやら爪やらで全然。そう言うわけだから魔物肉と言えばボア肉さ!」


 そうなんだ。てっきり倒した後剥ぎ取ったりするのかと思ったよ。


「一本ください。それと、贈り物で喜ばれるものって何かわかりますか?探索者で。」


 色んな人を見てきた人なら分かるかも。誰かにプレゼントなんてした事ないからいまいち喜ばれるものって分からない。


「そりゃあ、武器とかか?あー女の子ならアクセサリーとか魔道具かな。最近はアーティファクトも少し出回ってるな。」


 アクセサリーなら日向の動きの邪魔にはならないよね!食べたらそれを探してみようかな。


「はいよ、美味しいぞ?きっと病みつきになること請け合いさ!!」

「いただきます!」


 私は串に刺さった肉巻きを見る。魔物の肉と言うが普段食べる牛肉とあまり変わらない見た目。言われなければ魔物肉と分からない。


 美味しい!えぐみとか臭みがあるかなぁなんて思ってたけど逆に牛よりも美味しいかも。タレは焼き鳥のタレに近いかも?他にも味があるらしいから今度日向と来よう。


「ご馳走座でした!美味しかったです、またきますね。」

「おう、ご贔屓に。」


 薬屋って書かれた店には見たことない色の液体が入ってる瓶が置かれてた。


「ポーション……?色が毒々しいんだけど本当に薬?」

「あらあら、ポーションは初めて?」


 お店の奥の方からお婆さんに声をかけられた。すごく穏やかそうな人だ。


「はい、最近探索者になりました。」

「それはそれは。ポーションってのはね、傷ついた身体とか魔力を回復したりとか毒消しとかを瞬時に治せる魔法薬のことさ。まぁ、総じてポーションだねぇ。」


 私が知らないだけでそんな便利なものがあったんだ……でも、私見たことないの何でだろ。こんなに便利なのみんな使いたいと思うはずなんだけど?


「ふふ、なんでみんな使わないのかって顔ねぇ。ポーションは探索者にしか効果ないのよぉ。体内の魔力を使うから。」

「そうなんですね。」


 私も日向も怪我をしたことなかったし、私に関しては日光で死んでたから使うことなかったんだよね。


「おすすめは何ですか?」

「そうだねぇ、下級回復ポーションは持ってて損はないね。初心者のうちは外傷くらいしか無いから。」

「それじゃあ5つください!」

「まいどー。」


  リップくらいの瓶5つをバックに入れてアクセサリーを探して歩いているとそれっぽい店を見つけた。


「わぁ綺麗……あ、でも高くて買えない。安いやつでも10万円くらいするんだ。」


 高くて手が出せないよ……もしかしてこのローブも相当高いのかな!?急に触るのが怖くなってきたよぉ!


「何かお探しですか?」

「あ、すみません。お金が足りなくてもう帰ります……」


 まだ私が来る場所じゃ無い気がしてそそくさと帰ろうとする。


「お待ちください、失礼ですがお予算は?」

「一万円です……ご、ごめんなさいっ」


 あわわ、冷やかしだと思われてるよ……。私みたいなのがこんな煌びやかにきたのが行けなかったのかな。


「なるほど……プレゼントですか?」

「えっ、は、はい。」

「少しお待ちください。」


 そう言って店員さんは奥に行ってしまった。帰りづらくなって私はお店で待つことにした。するとしばらくして店員さんが戻ってくる。


「この品々はお一つ一万円となります。プレゼントにならこちらでも十分だと思います。」


 店員さんが持ってきたアクセサリーは店に並んでるものと遜色ないものだった。なんで安いんだろう。


「こちらの品々は効果はある筈のアーティファクトになります。が、全く効果が発動しないため売れ残りなんです。店に並べても売れ残るので売れるなら売りたいのですよ。」


 そうなんだ。あ、これなんか日向に似合いそう。


「このブレスレットってどう言ったものなんですか?」

「こちらですか……見ての通りリングの真ん中に猫の眼のような宝石が埋め込まれていることから【キャットアイリング】と呼ばれる品です。鑑定では文字化けして効果が分からずこの品々に置かれています。これにしますか?」


 日向喜んでくれるかなぁ。きっと日向にもらったローブには及ばないけど私の感謝の気持ちを伝えたい。


「はい、これにします!」

「分かりました、では梱包するのでしばしお待ちを。」

 

 私はどうやって日向に渡すかを考えて待つ。


 友達に何かをプレゼントするなんて初めてだから緊張するなぁ。喜んでくれるといいな。


後書き

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