第35話 俺、主なんだけど。

 チルチルは空高く連れていかれる。


 女の子ハンターは、パニックになっていて空しか見ていない。

 新人ハンターくんとスタン、ボッサが彼女を守って戦っている。


 アランは、杖を弓矢に変え、チルチルを掴むクヨムを射る。


 チルチルは、空から落ちる途中で、また、違うクヨムがチルチルを鋭利な鉤爪でさらう。

 他のクヨムも、チルチルを奪おうと嘴でチルチルを攻撃している。

 チルチルの悲鳴のような鳴き声が空で響く。


 女の子ハンターは、弓矢でクヨムを狙おうとするが、チルチルを射ってしまうのではないかと手が震えている。



 アランは、杖から炎の竜を放つ。

 炎の竜は、凄い勢いでクヨムに襲いかかり、瞬く間にチルチルを掴むクヨムだけになった。


「あのクヨムを射て!」

 アランは、女の子ハンターに命じた。


 女の子ハンターは、まだ手が震えている。


「出来るよ。自信を持て!」


 女の子ハンターは、小さく息を吐き出す。


 矢が放たれる。


 アランは、指をパチンっと弾いた。


 矢は勢いを増し、クヨムを突き抜けた。


「やったぞ!」

 新人ハンターくんの大きな声がする。


 チルチルがまた、空に投げ出される。


 アランは、防護壁でチルチルを囲み地上に優しく降ろした。


 女の子が駆け出し、ボッサとスタンも走って行く。


 こらこら、俺を守れよ。

 魔獣同士でも、仲間意識があるのだろうか。


 ……しかし、俺、主なんだけど。


 アランは、ビジュケルを杖で斬り倒しながら、チルチルの元に向かう。


 杖は光り輝く鋭利な剣となり、力を必要とせず、アランは踊るように、ビジュケルを切り裂いていく。

 新人ハンターくんも、アレクサンダーと一緒にアランの背後を守ってくれている。


 いいねぇ。

 アランは久しぶりに、共に戦う者がいる喜びを感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る