第27話 しばしの分かれ

 翌日の朝、アランはいつもと違う装いで食堂にいた。


「よう、結局行くのか。」

 強面こわおもてが声をかけてきた。


「魔法協会からの要請なんでね。」

 アランは、じゃがいものポタージュをスプーンですくって口に流し込む。


 うっ、旨い。


 チキショー、討伐に出たら美味しい食事も、しばらく食べれない。


 スタンとボッサを見ると、カリカリを食べたり、ミルクを飲んだり忙しそうだ。


「んっ、ちょっと、スタさん、それボッサのミルクだから。」


 店の女の子は、ミルク、カリカリ、ミルク、カリカリと横に並べて置いてくれたので、夢中で食べているスタンとボッサは、真ん中に置かれたひとつのミルクを取り合いし始めた。

 バカですねー。

 もうひとつのミルクを忘れてる。


 アランは、スタンのミルクを真ん中に置いた。

 これで横から、カリカリ、ミルク、ミルク、カリカリの順番に並んでいる。

 スタンとボッサは、今度は、間違えず、それぞれのミルクを飲んでいる。


「あーぁ、行きたくないなぁー。」

 アランは、心の声が駄々漏れだった。




 重い足を引きずり、登録証を作った店に来た。


 店のオッサンに申し込み書を書かされ、料金を払った。


「万が一の時は、どうするね。」

 オッサンに嫌なこと聞かれたが、店側としては必要なことだろう。


「妹に2匹とも、送ってほしい。」

 可哀想に、スタンはまた出来の悪い弟に戻る。まぁ、ボッサも同じポジションだろうな。


 まぁ、頑張って生きて帰って来るけどさ。


「そうだ、干し肉あるけど買わないか。安くしとくよ。大量に仕入れたから、サービスで多くしてやる。」

 オッサンは、味見でひとつくれた。


 アランは、干し肉を噛みきる。

「うん。いけるな。買っていく。」

 アランは、いつものカバンを開いて下に置くと、スタンとボッサが寄って来た。


「ダメだぞ。お前たちは、ここでお留守番だ。」

 アランは、2匹を店のカウンターに乗せる。

「良い子にしてるんだぞ。」

 アランは、2匹の頭を撫でてやる。


「じゃあ、預かるな。」

 オッサンは、2匹をまとめて奥の檻に連れて行った。

 ガシャンっと、扉を閉めたのだろう音とともに、オッサンが話しかけてきた。


「干し肉をもう一袋、サービスでやるよ。ほら。」

 オッサンは、毛皮の袋に入れて持って来た。


「何これ!ふさふさー。」


「ハンターに貰ったんだ。この袋もいっぱいあるから干し肉入れておけ。」


 アランとオッサンは、やいのやいのとカウンターで話し込んでいた。



 オッサンの所にある檻は、扉を開けるのも閉めるのも、摘まんで開け、摘まんで閉めるのだが、オッサンは、アランに干し肉を渡すのに気をとられ、勢いよく扉を押しただけだった。


 オッサンとアランが、話し込むなか、扉が開いた暗い檻の奥には、光る目がゆっくりと前に進み始めていた。


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