第20話 登録

 まずは、ボッサの登録をしなければ。


 大通りを進み噴水まで歩いた。

 噴水は、想像を遥かに越えて大きくてびっくりした。


「すげぇーな。」

 アランは、ここまでの道のりだけで、すげぇーなを連呼していた。


 噴水までは、朝早くから、店は開いており、ほぼ隣に宿屋がある。

 噴水近辺は、ハンター用の宿屋が無くなり、食堂兼酒場がいっぱいある。

 今は、朝早いので閉まっている店が多い。

 だいたい、どこも遅くまで営業しているから、11時過ぎないと開かないらしい。

 ほぼハンターが客だ。


 噴水を過ぎると、今度は、薬屋、防具屋、武器屋、魔道具屋、ギルドにインフォメーション、医院、そして魔獣紹介所兼調教兼登録所。


 ここまでは、すべてハンター用の店ばかりだ。

 これは、街の外からの厄介事に色々対処するためだ。

 街の近くで魔獣が出れば、ハンターが倒してくれる。

 外から入って来る怪しい人で、犯罪が起これば、ハンターが対処してくれる。

 これには、もちろん州都から報酬がでるし、街の秩序もある程度保たれる。

 そして、魔獣の登録所の先には、守衛がごっそりいる。

 つまりは、あの守衛がいる先が本来の州都と云うわけだ。


 ハンター以外は、皆、守衛がいる辺りまで馬車で行く。

 やっぱり、ハンターのイメージは、大方恐い人だからかもしれない。


「さて、ボッサ、登録しようか。」

 アランは、店に入る。


「いらっしゃい。」

 年齢不詳の男が、カウンター越しの椅子に座って新聞を読んでいた。


「ニゲル種の登録証を作成したいのですが。」


「あいよ、料金表ね。」

 眼鏡をかけると男は、アランを見た。


 料金表?種類あんのかよ。

「あー、シンプルなのでお願いします。」


「あいよ。じゃー、向こうのカーテンあるところに行ってくれ。」

 よっこいせ。と立ち上がるあたり、結構なお年かな。


 アランは、言われたとおりカーテンのところに行くと、カメラがあった。

 さすが州都。高い品を持っているなとアランは感心した。

 スタンは、絵だった。

 それなりに可愛く描かれていたし、ちゃんと似ていたから、あの人すごい人だったのかも。


「準備できたから、僕ちゃんおいで。」

 僕ちゃん?

 カメラを前に、オッサンがボッサを手招きする。

 もちろん、ボッサは行かない。っが、俺を見てオッサンを見る。

 やっぱり言葉が分かるのか?


「ボッサ、カメラの前に行こうね。」

 アランは、ボッサを抱き上げて、カメラの前まで運んだ。

 邪魔しないように、アランが戻ると、ボッサの横に、いつの間にかスタンもいた。


「お前は、いいの!」

 スタンを抱き上げ、そそくさと戻る。


 ボッサは、とりあえず真っ直ぐカメラの方を向いている。

 偉いぞ。モデルなみだ。

 モデルの仕事探すか。


「はい。僕ちゃん笑って。」


 笑う???


「いいねー。これ見て。」

 棒の先には赤いボールが付いている。


 うーん、なんか笑っているように見えなくもない……。


「あっ!」っと言った時には、スタンが赤いボールに飛びかかっていた。

 オッサンは、素早くかわした。

 慣れてんなー。

「どうも、すみません。」

 とりあえず、オッサンに謝り、スタンを探すと、ボッサの横に待機して、赤いボールが現れるのを待っていた。


 いや、そういう遊びじゃーねぇし。


「おら、坊主ども!」

 オッサンが、ノリノリかよ。


 オッサンは、赤いボールがついた棒を下で右へ左へと素早く動かして、ボッサとスタンを翻弄する。

 突然、棒を上に上げたりして、スタンは見事な跳躍を見せている。


 えっ、何これ。魔獣サーカスかなんか?

 登録証作りに来ただけなんだけど。

「……すみません。」

 今や、スタンとボッサの激しい動きに、アランは、おずおずと声をかけた。


「あー、いかんいかん。……つい夢中になった。……登録証だったな。」

 オッサンは、息切れしている。


「この写真を使おう。あー、そうだ、こんなんどうだ。動く写真だ。」

 トレーディングカードかよ。


「普通のでお願いします。」


「つまらないな。ウケがいいぞ。」


 見せる時、少ないだろう。


 ちゃんと登録されるのだろうか。


 アランは、料金を払い、その場で登録証を受け取った。


「サービスだ、3人で座んな。」

 3人?

 オッサンは、強引に記念写真を撮ると言い出した。


 アランは、もうどうでも良くなり、オッサンの言うがままに写真を撮られた。


「はい、パパと一緒に笑顔でねー。」

 パパ?

 パパじゃねーし。


「パパが一番笑ってねーな。」

 顔がひきつるわ!



「ん、大事にしな。」

 オッサンは、まるで仲の悪い家族を取り持ってやった的な顔をして、写真を渡してきた。


 仲悪くねぇし。


 アランは、店を出るとげんなりした。


 なんか、めんどくさい人だったな。

 ちゃんと登録されているといいけど。


「はぁー、じゃあ、街の散策を続けるか。……なんか疲れたな。」

 アランは、スタンとボッサを連れて守衛のごっそりいる場所へ向かった。


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