第19話 強面《こわおもて》

 高級毛皮たちは、昨日とは打って変わって、お子さまモードだ。


 昨日の食堂なので、場所にも慣れ安心したのか、くるくる回ったりしてハイテンションだ。

 ご飯の舞と言ったところだ。


「おはようー!おちびさんたちのミルクね。魔獣の子用のミルク仕入れてきたから。これ店のサービスね。」

 昨日の女の子が、座っただけで持ってきた。


「ありがとう。」

 スタンは、子猫サイズなだけだけどね。

 しかも、ボッサと競うように飲んでるよ。

 あー、飛び散ってるし。



「あー、気にしないで、あとは拭くから。それと人間様は、あそこから好きなだけ持ってきて食べてね。ミルクが新鮮だから飲んで。私のオススメは、ミルクにコーヒーを少し入れるの!美味しいわよ。まぁ、それぞれ好みがあるだろうけどね。魔獣の子たちは、あそこからカリカリを皿に入れて食べさせてね。」

 女の子は、朝からハイテンションだ。

 かわいいから許す。


「おい、野郎ども、おとなしく待ってろよ。」

 アランは、ハンター風にドスを利かせて言ってみたが、聞いちゃいねー。


 アランは、女の子のオススメのミルクのコーヒーを作り。

 とりあえず、お子さまたちをおとなしくさせるために、カリカリを皿に入れて戻り、今度は、自分の朝ご飯を選び始めた。


 やっぱり、朝は、卵。スクランブルエッグにするかなー、とカリカリベーコン。それとマフィンがある。さすが、パンは色々な種類があるな。俺の故郷には、こんな洒落たもんなかったな。

 この宿屋、最高じゃん。ヨーグルトや果物もあって、すごいな。


 アランは、たっぷり皿に盛って席に戻った。


 お子さまたちは、まだ、一心不乱にカリカリと格闘中だ。

 カリっと音ともに、カリカリの破片が飛んで行く。

「……おい、もー、破片を拾い食いしろ。」

 アランは、呆れながら、自分の朝食に専念することにした。


 まずは、たっぷりのミルクコーヒーを飲む。うーん、美味しい!

 マフィンに、ナイフで横に切れ目を入れて、カリカリベーコンとスクランブルエッグを挟んで、かぶりつく。

 うーん、旨い!


 ふと、前を見ると、強面こわおもてのハンターがこっちを見ている。


 こわっ。子連れだから邪魔くさって思われてんのか。確かに、ニゲル種は、ある程度大きくなるまで、調教師に預けるらしいから、連れて歩いてるの見ないもんな。


 急に、強面が立ち上がる。


 えー、こっち来たよ。


「すまんが、触ってもいいか?」


「……どうぞ。」


 強面は、強面なりの笑顔になり、ボッサを撫で始めた。


「……抱っこしてもいいか?」


「……どうぞ。」

 意外と礼儀正しい。俺のハンターイメージ偏見過ぎ。


 調教師に預けるから、小さいころの触れ合いがなくて寂しいのかな。


 ボッサ、強面に頬擦りされてるよ。


 ハンターは、相棒になる魔獣に対して敬意と愛情が強いと聞くけど、本当だな。

 スタさんは引いてるけど。


 って、ボッサ、強面にチュッチュッされてるよ。

 俺ならごめんだけど。

 スタさんは?


 スタンは、店の女の子にチュッチュッされてるよ。

 ……羨ましいな。


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