第9話 体は頑張っている

 大きな野原を通り過ぎたところで、程よい広さがある場所を見つけると、アランは、立ち止まった。


「スタさん、この辺りにしよう。」

 アランは、首に掛かる鎖を引っ張りだすと、手のひらにペンダントを乗せる。

 ペンダントには、石が3つはまっている。

 アランは、その中の茶色い石を押した。


 ぽよん。


「この魔法を作った人は天才だと思うけど、この音はさー、センス無さすぎじゃない?ぽよんって。とても家が建った音には思えない。」

 アランの目の前には、小さなログハウスが出来上がっていた。


 マジックハウス。


 ぽよんっと音とともに出来上がるこの家は、上級者が持てる魔法の家。

 種類は、色々あるが、アランは、3種類持っており、今回は、ログハウスを使うことにした。


 中に入ると、一通りの物は揃っている。

 中の物は、持ち主が揃えるので、アランは必要最低限の物だけ揃え、カバンの物も増えるとこの家に収納している。


 薬草を入れていた箱から薬草を取り出し、他の箱に移した。

 テーブルの上に箱を置くと、中にタオルを敷いて、魔獣の子を寝かせた。

 スタンもテーブルに飛び乗ると、心配そうに見ている。


「やっぱり痩せているなぁ。」

 思った以上に大変かもしれないとアランは魔獣の子を撫でた。

 栄養失調の上、重症だ。

 体がもたないかもしれない。


 アランは、もう一度、薬草を使って魔法をかけた。

 あまり魔法を使いすぎるのは、良くないだろう。

 体は生きるために、体を治そうと働いている。

 このやせっぽちな魔獣の子の体も。


 少し震えているかな。タオルを上から掛けてやり様子を見ることにした。


 町には、魔獣を診てくれる医者はいなかった。

 たぶん、城主がいるような大きな街に行けばいるかもしれないが、ここからは遠い。


 この辺は、魔獣が少ないし、町には、一応魔獣退治が出来る奴が一人や二人はいるはずだが、ニゲル種を見かけなかった。


「俺も頑張るから、お前も頑張れよ。」

 アランは、指で魔獣の子の頭を撫でた。


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