第10話 君は強い
翌朝、アランは、伸びをするとベッドから立ち上がった。
テーブルの上の箱の横には、スタンが心配そうに魔獣の子を見ている。
どうか大丈夫でありますように。
アランは、箱の中を覗いた。
魔獣の子は、静かに寝ていた。
頭を撫でると、一瞬目を開けたがまた眠ってしまったようだ。
もう一度、魔法を使うか。
アランは、魔獣の子に薬草を使った魔法を使い、側にいるスタンの頭を撫でた。
「朝飯にしよう。スタさん。」
昨日、町で丸いパンとベーコンを買ったので、ベーコンをカリカリに焼き、多めの葉野菜と一緒に挟んだ。
葉野菜は、スタンと魔獣の子のおかげで大量にある。
「スタさんは、チキンな。」
蒸し鶏をほぐして木の皿に乗せると、スタンの前に置く。
スタンは、凄い勢いで食べ始めた。
「……スタさん、こぼすなよ。」
テーブルの上に、飛び散るチキンを皿に戻してやりながら、魔獣の子を見る。
おや、起きている。
横になった状態だが、顔を上げている。
「大丈夫か?」
魔獣の子は、返事でもしているようにしっぽをパタンパタンと打ち付けた。
「お前は、強い子だよ。……うわっ、びっくりするなぁ。スタさん、駄目だぞ。」
スタンは、アランの持っているパンの匂いを嗅いでいた。
「まったく、油断も隙もあったもんじゃない。何でも食いたがるんだから。……そうだ、お前は食べるか?」
アランは、魔獣の子にパンの匂いを嗅がせたがいらないらしく、また眠るようだ。
「まだ、食べれないか……。」
アランは、魔獣の子を撫でた。
「しかし、ボッサボサだな。」
魔獣の子は、毛に血が大量に着いていたので、昨日お湯で濡らしたタオルで拭いてやったが、毛どうしが変に絡まりボサボサになっていた。
「名無しだと面倒だな。ボッサボサだから、ボッサでいいな。」
アランは、名前をつけるセンスがなかった。
スタンは、アランの妹がつけた名前で、スタンを出来の悪い弟としていた。
「あなたは、本当にダメね。」とスタンは、何もしてないのに言われ続けていた。
かわいそうに。
「スタさん、こいつの名前はボッサな。ボッサボサのボッサ。」
スタンは、気の毒にと思っているのか魔獣の子を見た。
「ボッサが治るまでは、ここを動けないな。」
ひとりで生きていけるかな。
アランは、ため息をついた。
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