第6話 出たよ、やっぱり。

 滝とあったが、穏やかな滝だった。

 緩やかな川に、キラキラと滝からの水が跳ねている。


「気持ちいいな。スタさん。」

 スタンは、早速、水を飲んでいる。がしかし、直ぐ様川から離れた。

 基本、水遊びなどしない。

 だが、風呂は好きだ。

 これは、たぶん小さい頃から俺と一緒に風呂に入っているからだろう。

 ヘル種は、元々人と一緒に暮らさないのだから、スタンは特別だ。

 魔法を使って毛もすぐ乾かしてもらえるから、嫌がらない。喜んで入るぐらいだ。


 しかし、そろそろ洗いたいな。アランは、スタンを撫でた。

 最近、風呂の無い宿屋ばかり泊まってたからな。


 アランは、川で顔を洗うと気持ち良さそうに空を見た。


「静かな森じゃないか。……ってスタさん、何見てるの?止めて怖いから。」

 スタンは、先ほどまで歩いて来た森の道をじっと見つめている。


「たまに、あるんだよな。何も見えないのに一点をじっと見つめる時が……。まぁ、昼間だから大丈夫。」

 アランは、自分を奮い立たした。


「スタさん、この先の野原で薬草探したら、森を出よう。あとは、危険そうだからな。」

 アランは、魔女から貰った地図を確認しながらため息をついた。


「無いなぁ……」

 探しものは、中々見つからないものだ。


「さぁ、スタさん、行くよ。」

 アランは、滝を背に、また森の中に入って行った。


 今度は、随分暗い。

 日射しが入ってこないし……。

 スタンはやたらと来た道を振り返る。

「もう、本当に止めてくれよ。スタさん。」

 アランも、後ろを振り返りながら前に進む。

 特段、魔獣の気配もそんなに感じない。居てもたぶん小物か何かだろう。


「もう、怖いなぁー。」

 アランは、早歩きで次の野原に到達した。


「はぁ、はぁ、暑い……」

 アランは、息も絶え絶えになりながら野原を見渡す。


 アランは、また防御壁で自分を囲って飛びたった。


 一応、薬草を確認したが、先ほどと同じで探している薬草は見つけられなかった。


 しかし、ここは先ほどの野原と違い狭くて暗い。大きな木で、あまり日が当たらないのだ。


 アランは、スタンのところに戻るが、スタンはまだ後ろを見ていた。


 もう、戻りたいがスタンの謎の行動で戻るのが怖い。魔獣なら、スタンがビビりまくりで分かるが、ビビってないってことは、魔獣ではない何かってことになる。


 アランは、恐々スタンに近付く。

 スタンに触れようとした瞬間、バキッと木の枝の折れる音がした。


「ぎゃーーー!」

 アランは、腰を抜かしスタンに抱きつく。

 スタンは、アランに抱きつかれながら、音がした後ろを見る。

「ふにゃーーー!」

 スタンは、薄情にもアランを置いて逃げようとした。


「何あれー、魔獣じゃん。」

 3メートルはある大きな魔獣が、後ろの野原の周りの森から出てきた。

 正体が魔獣と分かるとアランは立ち上がった。


「もう、止めてくれよ。寿命が縮まるだろう!俺は、こういうの駄目なんだよ。静かなところで、急に音がしたらびっくりするだろ。」

 アランは、魔獣に指差しながら説教していた。

 アランは、魔獣よりお化けが怖かった。


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