第29話 優しいお化け屋敷

「優しいお化け屋敷…ここね」

 と見上げるとなんか…可愛いお化けの絵が描かれた看板が描いてあり、横に文字で


《お子さん連れでも大丈夫!怖くないよ!!》


 と書かれていた。


「どうします?全く怖くないようですよ?てか子供向けだったんですね。通りで家族連れが多い」

 と魚住は辺りを回すと確かに家族連れが笑いながら出てきて


「お化けさんにお菓子貰ったー!!」

「あら、良かったわねリンちゃん」

「お化けさん優しかったね」

 とにこにこしながら歩いて行った。


「これはこれは!美玖様にたっくん!」

 と高清水が出てきてひょっとこ面を付けていた。


「……芸人?」

 と突っ込むが


「いえいえ、あまり怖い姿だとお子さんが泣くからですよ」


「それ、もうお化け屋敷機能してなくない?」

 と聞くと


「まあ、優しいお化け屋敷ですから。そもそもカップルが来るので怖いのにすると中で定番の『きゃー、怖ーい!』『大丈夫か?怖かったら俺に捕まりな』『キュン♡』が発生する恐れがあるので全く怖くないと言う斬新なお化け屋敷にしたのです!」

 とひょっとこメガネカッパが言う。


「なるほど、ターゲットは家族連れ、子供というわけか」


「たっくん、そうだよ!中は高清水財閥の力で本物のレールを敷き、トロッコに乗り移動するアトラクションお化け屋敷で、おばけも可愛く登場して子供にはお菓子をあげ、奥さんには化粧品サンプルを渡し、お父さんにはお土産のビールを随所で渡すのであります!」

 と説明が加えられ


「なにそれ、文化祭予算無視じゃない、ずるいわよ?ひょっとこカッパ!」

 と言うと


「別にいいじゃないですか、お客さんに喜んでもらえるなら」


「しかし子供向けだとそんなに入らないんじゃ?」

 と魚住が言うと


「いえ、ちゃんとたっくん向けにも魔法少女お化けコスVer等身大パネルも設置済み!オタク層も確保!


 他にも今季の人気アニメ作のお化けVerのグッズも展開、


 百合、BL新刊本も取り揃えております!この辺は販売となり、利益も出ますので」


「もうお化け屋敷でも何でもないんじゃないの?それ…」


「まあまあ、感想は中に入ってからのお楽しみですぞ!」

 と背中を押された。


 中は程よい空調でトロッコに乗ると動き出した。あまり薄暗くもなく、


 壁から可愛いお化けのコスプレで


「いらっしゃいませー!お化けだよー!」

 と女生徒達が和ませてくる!


「魚住くんだーー!きゃー!お菓子どうぞ!」

 と早速魚住はお菓子をもらっていたが私を見てお化けコスの女生徒が


「チッ、ほら…スルメだよ!」

 とポンと投げて渡された。

 えっ!?まさかのつまみ…。おいおいおいおいいいい!!

 私の扱いが酷くない?


「くっ!魚住と来るんじゃなかったわ!!」

 とそこでトロッコが止まりミミたんお化けコス等身大パネルが現れ魚住はスマホを取り出して


「うおおおおおおおおお!!」

 とカシャカシャと角度をつけながら連写していた!

 おい女子見ろよ!オタクがいるぞここに!

 てかこんな時だけいないし!


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ポンコツお嬢様とその執事クソである 黒月白華 @shirofukuneko

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