第28話 文化祭デートですねお嬢様

 とうとう始まった文化祭!

 魚住は仕事でとりあえず私と回ってくれる様だ。2人とも午前はシフトが空いてるし、一応こいつは執事だし。

 ぶ、文化祭デートなんかじゃないんだからね!!


「あ、魚住、屋台の食べ物買ってよ」


 と美味しそうな屋台の食べ物の匂いに惹かれる私だが、


「今月は節約しないとですよ、お嬢様」


「……ケチ…」


「まあ、たこ焼きくらいなら半分こできますから買ってきますね」


 なんかさっきから魚住が丁寧語で怖い。きっとお祖父様が来るから言葉を丁寧にしてるんだわ。


「お嬢様、買ってきましたよ。さあ、口を開けて」


「自分で食べれるわよ!!」

 と言うが魚住はグイグイたこ焼きを寄せてきてわざとほっぺに押し付ける。


「あっつ!熱いんだけど!おいコラ!熱い!」


「はは、ごめんなさいお嬢様!てへっ」


「キショ!!」


 そこで魚住が耳に口を寄せる。


「左後ろに怪しいおっさんがこっちを見ている。おそらく誘拐犯だ。黒の帽子をかぶっている奴だ」


「えっ!?」


 後ろには確かに黒い帽子を被ったいかにも怪しい腹のでた男がチラチラと分かりやすくこちらを見ている!!


 うわっ!マジなの?誘拐って!!


 すると魚住が急に手を取りにっこり笑う。営業スマイルやん。


「お嬢様、人が多いので俺から離れちゃダメですよ?」

 それを見ていた魚住ファンの女子が


「きゃーっ!言われたいセリフうううう!」

「……そこ変われや、小檜山美玖うう!」

 となんか私は恨まれた。


 ともかく移動するとおっさんも後をついて来てるので急いで人混みに紛れ私達はとりあえず占いハウスに隠れた。

 別に手を握られたからってドキドキしてないから!


「ちっ、バカップルか?

 さて相性でも占いましょうか」

 やり過ごす為に魚住は営業スマイルで


「よろしくお願いしますー」

 とにっこりする。


 占い師役の生徒はガラス玉に手をかざし、


「ふーむ、あなた達の相性は…0.3%です!別れた方がいいでしょう!!最悪ですね!!」

 と言われた!

 おい、いくらなんでも小数点はないだろが!!ふざけんじゃないわよ!!


「あの占いってタロットとか使わないんですか?」

 と私は言ってみた。


「え、ああ、タロット?そうですね。ちょっと待ってね」

 とゴソゴソカードを取り出し、更に初心者用の解説書まで取り出しながらチラチラ読んでいる。

 何だこいつ、暗記しときなさいよ!!


 バラバラとタロットを並べ


「じゃあ、えーと何?運勢?恋愛?」

 と聞いてきた。


「……じゃあ俺はミミさんと結ばれるでしょうか?」


 と魚住が真剣な顔をして聞いた。

 ていうかミミさんて何?あの魔法少女のこと?ばっかじゃないの?結ばれるわけなくない?二次元でしょうが!!


「占ってみます」

 どうやら占い師さんは私をミミさんと勘違いしてチラチラみている。


 本を見ながらおぼつかない占いで


「おお…おお」

 とか言いながらカードを捲る。


「死神のカードでました!おめでとうございます!あなたとミミさんは破局します!


 ですが安心してください、直ぐに新しいかの…」


 ゴシャアアア!


 と机に占い師さんの頭を沈める魚住。

 もう気絶してるが


「は?俺とミミたんの愛が破局だと?ふっざけんなよこのインチキ占いが!


 ぶちころ…」


「はいはい、魚住ストップ!!あんた生徒会や風紀員に抹殺されるから!


 さっさと出るわよ!」


「でもおっさんは…」


「もういなくなったでしょ」

 と、チラっと占いハウスの暗幕を覗いてみたらおっさんがキョロキョロしているのが見えた!


 めっちゃまだいた!

 しかもこっちに近づいてくる!



「まずいわ!まだいた!しかもこっちくるって!」


「…仕方がないな」

 と魚住は気絶した生徒の占い師の衣装を剥ぎ取り


 私と二人羽織みたいな感じで衣装を羽織った。うまい具合に顔も隠している。


 するとおっさんが入ってきた。


「邪魔するで」


「いらっしゃいませ」


「人探ししてるんや。占ってくれ」


「探し人ですね?」

 するとおっさんは私の写真を出して


「このアホみたいな顔の嬢ちゃんを探しとる。この学校のどこにいるか占ってくれ」


「はい、料金は500円です」

 いや、金取るんかい!


 仕方なく二人羽織の私が服の裾から手を出す。


「ほらよ」

 と千円札をくれた。


「釣りはいらねえ」


 やだ!おっさん太っ腹!!わーいわーい!!


「おほん!では…」

 と魚住はさっきのカードを見る。私は適当にカードを摘んでひっくり返した。


「これは…スターのカード!

 このアホお嬢さんは今は劇場…体育館の劇を見ていますね」


「なるほど…そうか、ありがとうな!じゃ俺は行くぜ!文化祭楽しみな!」

 と去っていく。


 はあ…。

 私は魚住にそのままもたれかかり


「ちょっとアホお嬢さんはないでしょ!」


「つか、おっさんからもらった千円をよこせ」


「いやよ、これは私のお金よ!」


 奪われてたまるか!


 と対抗したがあっさり手首を掴まれドタリと組み伏せられ魚住と顔が接近した。


 やだ!近い!顔が一応いい魚住なのでドキドキしてしまう!


 ううっ!


「さあお嬢様、お金を寄越して?」

 とニヤリと囁かれると私はコロッと騙されて


「ううっ!ち、ちくしょうめ、持ってけドロボー」

 と千円を渡すとゴシャアと魚住は私を机に沈めた。


「回収完了!このアホに金を渡すとめんどいからな。おいいつまで寝てる。


 さっさと行くぞ、あのおっさんに見つからないよう、高清水くんの【優しいお化け屋敷】にでも行って時間を潰そう」

 と言う。

 私のときめきを返せ、このクソ執事が!


 気絶している占い師の生徒に再び服を着せて魚住は起こした。


「大丈夫ですか?今さっき貧血で倒れてましたよ?先生呼びます?」


「え?…あれ?何が…?」

 と生徒は寝ぼけて前後の記憶を失ったのかぼうっとしていた。


「ですから貧血で倒れたのです」


「そ、そうだったかな、すみません、昨日ちょっとよく眠れなくて…」


「いえいえ、ゆっくり休んだ方がいいですよ」

 と魚住は営業イケメンスマイルをすると生徒はキュンとして


「あ、ああ、はい!ありがとうございます!」

 と顔を赤らめた。

 占いハウスを出て魚住を見て私は


「うーむ…。なるほど。こう言う展開もありか…」

 とBL妄想をしようとしたら、魚住に頭をチョップされ笑顔で


「おーい、俺をBLに巻き込むなよ?アホお嬢様?」

 と高清水のお化け屋敷を目指した。







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