第26話 休み明けのカップル率異常さ
というわけでとうとう夏休みが明けた。
宿題はなんとか済ませた。偉いわ私!
魚住は休み明けに早速女子に群がられていた。
あの恵比寿柚乃も人をかき分けながら魚住に近寄り
「魚住様!!これ!夏休みにスイスで買ってきたお土産ですの!是非貰ってください!!」
とこれみよがしに高級菓子袋を渡していた。
魚住はホクホクで
「ありがとうございます!恵比寿様!大切にいただきますね」
と営業スマイルを繰り出しただけで柚乃は鼻血を出して倒れた。
「柚乃様ーーー!!」
と駆け寄る取り巻き達。
魚住のモテっぷりはいつものことだけど、夏休み明けの学校は異常にカップル率高かった。明らかに夏休み前と違い、クラスに3人〜5人はカップルが誕生していた。
私は海でゴミ拾いということをしていた中、こいつらはイチャついていたんだなと思うと虚しかった!!
*
アパートに帰ると魚住に愚痴を言った。柚乃のお菓子をお茶受けにして。
「それでね、そこら中にハートが飛び交いキショかったわ!!
なんで夏休み明けるとあんなに増殖してるのかしらカップルは!?」
「普通にアオハルしてたからでしょう。僻むなんて醜いですよーおじょーさま…」
うぎぎっと平然とお菓子をもぐもぐ食べる魚住。
「あんたは女の子からモテてお土産までもらっていいわよね!!」
私なんて一層孤独感が増したと言うのに!!
「…何僻んですか。醜い。まあモテるのは元から顔がいいからですが。
それに誰と誰が付き合おうと放っておけばいい。俺にはミミたんさえいればいいしな」
てミミたんフィギュアを拭いている。
「キショ…」
「BL好きのお前にだけは言われたく無いわ。キショ」
と返されてバチバチした。
「ふう……。やめましょう…。くだらない…。
そもそも他人が誰とくっついてイチャイチャクチャクチャしていてもいいじゃない。
私は奴らがイチャイチャクチャクチャしている間に勉強していい点を取り、東大に行くのよ!」
「…バカがバカなことを言い出したな…。そもそもクラス委員長さえも彼氏ができていたぞ、休み明けに。
ちなみに委員長は学年3位をキープしている!」
「なっっ!!なんだとおおおおおお!!!?
なんで頭いい奴が夏休み恋愛なんてバカな真似をしてしかも成績もキープしているのよ!!
ふざけるなあああ!!」
と言うと魚住は死んだような目でこちらを見て
「頭いい奴は頭いいなりの恋愛をしつつ勉強も疎かにしない。何故なら恋愛と勉強が両立できるからだ。
恋愛し彼女彼氏と励まし合い、勉強にも勢が入るんだ」
私はガクンと膝をついた。
「そんなっ!!恋愛脳の奴なんて皆バカでしかないと思っていた私の常識を覆されたっっ!?」
「……彼氏もいないのに俺に夏休みの宿題を手伝ってと泣いて土下座したお嬢様とはレベチなのです、彼等は…。
そもそも夏休みの宿題など等に始めに終わらせて、更に塾に通いながらも恋愛までこなしてみせるスペシャリスト!
それが彼等、頭いい奴等だ!」
私に衝撃が走る。
そんなスペシャリストがクラスにいるとか……ま、負けたわ…。
完全なる敗北!
この美少女小檜山美玖の完敗だわ……!
「ううっ…」
と悔しくて泣いていると魚住が肩に手を置き慰めるようにポンポンと引き寄せた!
えっ!?何!?
魚住!?
急に接近して慰めてくれるので驚いて顔をあげると魚住は
「お嬢様あ…。そんなわけで明日から休み明けのテストですけどあんた勉強しなくていいんすか?
俺はもう勉強して終わって後は寝るだけっていう頭いい生活してますが…」
「え?あんた帰ってきて夕飯を作っただけでしゃ?まだ勉強してないじゃない?」
と言うと魚住はニヤリとして
「ふふっ…、俺は今日…図書館に寄って勉強してから帰宅したので」
と言われて更にガガーンとなる。
「人の恋愛に愚痴ってるお前はとんでもないバカだ!そんな奴が東大などおこがましい!!」
「いや、ドラマでバカとブスは東大へ行かねば!」
とか言うセリフ言ってたじゃない!!」
「バカめ!ドラマはドラマだ!!
と言うことで俺は寝ます。睡眠大事だしおやすみなさい!」
とさっさと魚住は寝巻きに着替えて寝た。
机には珍しく勉強した後も少しあった!!
これが頭いい奴がすることなのか…。
私はそっと教科書を開いて泣く泣く徹夜でテスト範囲を暗記しようとしたが夜中眠さで限界に達して涎を教科書に垂らし皺皺にさせて朝、絶叫したのだった。
せめて彼氏ができる夢を見たかった。
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