第21話 お嬢様痴漢です
雨の日、私と魚住は盛大に遅刻する羽目になった!
「あんたが目覚ましの電池入れ忘れてたからじゃない!?」
「お嬢様しっかりしろ?今時目覚まし時計なんて昭和なもの使って起きる人いないぜ!
スマホのタイマーかけ忘れたんだろがい!」
「いや、何がだろがいよ!!
あんたも忘れてんでしょ!?とにかく急ぎましょう!ゼェハァゼェハァもう無理死ぬ!息が!!」
さっきから走りっぱなしでもう無理!お嬢様の私には無理!
「魚住…こうなったら最終手段よ!タクシーを呼んで!雨も降ってるし」
「そんな金はない!ほら立て!もうすぐバス停だ!!」
「ううっ!鬼!!」
と言うやり取りを経て、私達は何とかバス停までたどり着いた。
雨なのでめっちゃ混んでてとても座れない。
もう嫌、バス嫌!雨の日のバス地獄!苦しいっ!四方から押しつぶされて辛いいい!
「きゃっ!」
バスが揺れた時に可愛らしい他校の女の子が魚住に寄りかかり頰を赤くして
「あっ、ご、ごめんなさい…っ!!」
と魚住にポーっとしながらもじもじしていた。
「いいえ、混んでるので気になさらず」
うわっ!出た!魚住流営業スマイル!てか、普通に青春してんじゃないわよ!!何その漫画かドラマみたいなシチュ!!
しかしそこで急ブレーキ!!
「ぎゃっ!!」
今度は私が魚住に寄りかかり、反対側にいたさっきの他校の女がめっちゃ潰れた。ふふ、ざまあ!!
まあ、どうでもいいけど?
さあ、魚住!
『お嬢様大丈夫ですか!?』
くらいいいなさい!?
とその時だった!
お尻に何か…当たっている!!
え!?
こ、これって!!まさか!
噂の痴漢!?
ヤバい!私が超絶に可愛いJKお嬢様だからって!痴漢はダメやろ!人生初の痴漢イベントに遭遇してしまった!
と思ってる場合じゃない!!
た、助けて!魚住!!
と涙目で魚住を見ると
魚住が困った様な顔してこちらを見ている。
?
おい、ちょっと、お前が困ってる顔してどうすんの!?
と思っていて、よく見たら、よおく見たら、さっきの他校の女があろうことか魚住のお腹を後ろから抱きつくみたいにサワサワと怪しい手つきをしていた!!
なっ!!
何してんのこの女っ!!?
「助けてお嬢様」
と魚住が口パクで訴えてくるが、私も痴漢に遭っている!!
おい、お前男でしょ!先に私を助けて!!
と言う目で必死にアピールするとようやく魚住が私の異変に気付いたが、一瞬、真顔になりボソリと耳元で喋った。
「お嬢様のお尻に当たってるのはお婆さんが持ってる傘です」
「えっ!?」
「傘です」
「………」
お尻に何とか手をやるとプラスチックの傘の枝が当たった。
本当に傘だ!!私の初痴漢、傘!!
しかしそうなると本当に痴漢に遭っているのはもはや魚住だった。
よく見ると後ろの女が顔を赤くさせふんふんと魚住の脇を嗅いでいた。
うわあ。
魚住も
「ちょっ…やめて……」
とか言ってる。
そして泣きそうな目で私を見ていた。
完全にSOSサインだ!
その時、またバスが揺れて大きく寄りかかりその反動で私は後ろの女の鼻の穴に指を突っ込んだ。
「ふがあっ!!!」
と他校の女がアホみたいな顔になり私は必死で
「あ、ごめんなさい」
と謝った。
そして女の子は私を睨み、指を抜き泣きながら私の手を取りあろうことか、
「いやあああ!!痴漢!!この人痴漢ですっっ!!」
と泣き叫んだ!!
「は!?」
いや待って、私女だけど!?
バスの運転手や周囲の人が私を見てザワザワしていた。誰かが通報する声が聞こえて、パトカーがやってきた!!
停留所で降りるように言われた。
警官に
「女の子が女の子に痴漢するのは初めてだよ!」
と言われ私も
「いや、やってません!!私!」
「はいはい、初犯は皆そう言うのですよ」
「本当に、本当にやってないんです!!冤罪です!!」
と弁明する。しかし他校の女は私に恨みがあるらしく
「お巡りさん!この女が私の胸を触ってきたんです!!」
と言われる。ちくしょーこの女!!ここぞとばかりにデタラメ言いよって!!
と思ってると魚住が
「すみません。俺もこの人に痴漢されました!!」
と他校の女の経緯を説明し、濡れ衣を着せられた私に謝ってきた。
ようやく誤解が解けた。
雨はすっかり上がり、私達は水たまりを避け歩いた。
「いやあ、雨の日のバスは怖いなあ!まさか女に痴漢されるとかなあ!」
「ふっ……。魚住。中々の怖がり様だったわね」
「実際、怖かったんすけど」
「何、乙女みたいな事言ってんのよ!!」
「お嬢様……。あんた、傘に痴漢されて俺にSOSサインを求めてきましたよね。正直、引きました。
こいつ……、バカじゃねーの?と思いましたよ」
「わああああんん!酷い事さらっと言ってんじゃないわよ!!
すると魚住はにっこり笑い
「お嬢様なんか痴漢する奴いないて。そんなに痴漢されたいなら俺がいつでもやってあげますよ?」
と手をわきわきするから
「お巡りさんここに変態がいまーす」
と言うと
「まあ、そん事よりお嬢様。完全に遅刻ですな」
「……私達は遅刻する運命だったのよ……」
と2人してため息を吐き、トボトボと学校に向かったのだった。
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