第20話 キスシーンをどう思う?

「ねぇ、魚住見て…。路上でキスをしている男女がいるわ」

と帰り道に私はイチャイチャ見せつけカップルを見つけ、隣の魚住に言うと


「何でじっくり見てるんだよ。そっとしとけよ。どうせ2人の世界に没頭して周りが見えていないんだ。


俺なら法律で周りの迷惑になるから路上でキス禁止令、罰金一万円くらいは取るな……」

と言う。

魚住が政治家になったら世も末だわ。

カップル達はバツの悪そうな顔をして去って行った。


歩きながら通り道の公園を通ると、またもやベンチに座りながらキスをしているカップルを発見した!


「魚住見て!またいたわ!」


「いや、だから見るなよ。放っときなさい。あれはもう見せるのが仕事みたいなものだと思っときなさい」


「わざわざ見せつけて何が楽しいのかしら?」


「そりゃあ、僕達、私達はこんなにラブラブですよ!世界中の皆さん祝福して羨ましがってください!!」

とかでしょうな。


「ええ?フェラーリ買ったから見てくれっていうバカ金持ちと同じ発想!?」


「それはフェラーリ見せびらかしたいだけの奴」


「じゃあ、恵まれない人に多額の寄付をして『あの人は凄い、素晴らしい人だ!』と思わせられるのは?」


「だんだんズレていってるぞ?」


「でも注目を浴びたいから見せつけキスしてるのよね?」

と言うと魚住は


「それプラス、外でキスすると言う行為に開放感を感じているのかもしれない。昔は公衆便所も少なく、男は外で放尿するが如し」


と魚住が言うと、ベンチに座っていたカップルは逃げる様に去って行った。


私達はそれを見てバアンと手を打つ。


「まあ、普通のカップルは家かホテルか夜景の見える綺麗な場所か車かでやってるでしょう」


「成る程、こう言う所でやる人はつまり……お金がないのね!?」


「いや、知らんし、どうでもいい」


「待って、魚住、それなら学生はどうなの?ほら壁ドンからのキスとかはよく学校でしてるじゃない」


「何の漫画の話だ」


「桃色片想いBL版」


「BLかよ」


「壁ドンなんてリアルで誰かに見つかったら学校中の噂だわ」


「そっとしとけよ。見てもそっとしとけよ」


「こないだ、私、学校で見たのよ。あれはD組の小林くんと大宮さんだったわ」


「あの2人は付き合ってたのか」


「確か同じクラスで美化委員会だったわ。側にゴミ箱があったからゴミ捨てに行く途中だったと思うの」


「何だその分析力」


「ゴミの側で普通する?しかも大宮さんから小柄な小林くんを壁ドンキスしていたのよ!!」

と言うと魚住は


「小林くんは女子から可愛いと評判だったから焦ってしたのだろう。そしてそれを涎を垂らしながら見ていたお嬢様が普通にキモイな」


「失礼ね!涎垂らしてないわよ!!鼻血は出たけど!」


「出たんかい!」


「出たわよ!!だってあんな!もう、めちゃくちゃ濃いキスを目撃したらね」


「いや、大宮さん攻めすぎ!」

と突っ込む魚住。


「と言うことで学校の風紀が乱れるから先生にチクった方がいいか、それともそれとなく魚住が噂を流して学校中に知れ渡るのとどっちがいい?」

と私が聞くと魚住は


「いや、俺は見てないし何で同じ学校のやつを窮地に立たさないといけないんだ」


「あら、さっき外でやってた人たちに対してはどうでも良さげだったじゃない」


「そりゃ他人だからな。でも同じ学校の奴らは、いろいろ問題になると騒ぎになるし、噂を流した奴は誰だと詮索され、将来的に


「『お前のせいで俺たちは別れさせられ、人生詰んだ!!


お前のせいだあああ!!』


と小林くんが怒りで我を忘れて俺が刺される未来が無きにしも非ずだから」


「そうね、もし小林くんが反グレと繋がりがあったら魚住は刺されるどころじゃなく山中に埋められてしまうわね」


「キスの噂流しただけで俺は山中に埋められるのか。そうしたらもう俺はお嬢様にご飯作れないなあ」

と言うので


「そ、それは困るわね。仕方ないからそっとしとくしかないわね」


「その通りだ。キスしてる奴らを見かけてもそっとしておく……。これが1番の解決法だ」

と私と魚住は納得してスーパーで買い物して帰る。


「所で魚住、今日のドラマ【ストロベリー】はキスシーンがあると思うのよ。予告でやってたもの」


「そう言えば。あるな」


「初めてのキスは苺の味とかいう伝説はどこからきたのかしら?」


「甘酸っぱい気持ちを表現したかったんだろう」


な、成る程!!


「苺を本当に食べた後じゃないと苺の味とか言えなくない?」


「確かに、ラーメン食べた後だとニンニク臭いだろうし、味噌ラーメンなら味噌味……?」


「そうね、納豆食べた後なら納豆味ね」


「想像したら臭そうだし、まず、納豆を食べた後にキスしてる奴なんて絶対にいない!」


「そもそも食べ物を食べた直後にキスが許されるのは果物だけなのよね」


「そうか!デザートと言う意味でロマンチックさを演出しているのか!!」

と魚住は気付く。


「魚住……じゃあ今日のドラマのキスシーンはドリアンを食べながら見ましょう」


「…お嬢様……、買ってないし、何気に高級フルーツなので諦めて納豆でも食いながら見てろ」

と魚住は高級フルーツのおねだりを阻止したのだった。

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