第12話 ガチでヤバいわよこのデート3
結局チーズ林檎を食べることになった。意外と美味しいのが癪であった。
魚住が
「お嬢様、鼻の下に鼻くそがついてございます」
とか言ってにこやかに嫌味たらしく言ってくるが、鼻くそなんかついてるわけないでしょうが!!
「すみません、チーズ林檎のカスと見間違えました」
と言う魚住。ぶん殴りたいけど我慢よ私。
「お嬢様、見てください、どこにでもあるメリーゴーランドとコーヒーカップですよ」
と魚住が指差す。メリーゴーランドとコーヒーカップは老朽化が進み、色褪せて電球はもちろんついてない。
とりあえず私達はまずメリーゴーランドに乗ったが、音程の外れた音楽とギシッという音が響き、更に老朽化した馬が何となく不気味でとりあえず早く降りたかった!
よく見たら馬を支えてる棒にガムテープが巻き付けられていた!!
コーヒーカップなんて、めちゃくちゃ鈍くて、しかもハンドルは壊れていて回せなかったから、ただ乗っているだけで面白いとも感じなかったが、魚住は…
「うえ…気持ち悪い…」
と吐きそうだった。いや、こんなゆっくりな回転で酔うなよ!と近くのカップに乗ってる綾さんも
「うえ…ぷ…」
とこっちも吐きそうだ!!
なんなの!!?
コーヒーカップを降りてからお化け屋敷みたいなものがあった。と言っても小さいもので5分もあれば出て来られそう。
「行きますか?お化け屋敷。世界一怖いお化け屋敷ですって」
「こんな所に世界一があるの?それは楽しみねえ」
と言い、私達はお化け屋敷に向かう。こんな所に世界一があるわけないでしょ!
と思いつつ、中に入る。
薄暗い証明にガタガタと昭和レトロな扇風機が置いてあり、何年前から使ってるのよ!?と言うことを無視し、順路を進むといきなりなんか包丁を持った鬼が
「悪い子はいねぇかーー!」
と壁の隙間から出てきた!生身の人間らしい。だが、怖いというよりこれ、ナマハゲよね?秋田のナマハゲよね?怖いって言うか子供専用なの?
「いねぇか」
と言い、ナマハゲは元の配置に戻って行った。
「お嬢様、怖かったらしがみついていいんですよ?」
と言う魚住。
「今のでしがみつく要素あった?」
と言うが綾さんが後ろから見ているし、袖だけちょんと掴んでおいた。
順路を進むと古井戸が出てきた!
ははん、あそこからなんか幽霊が出てくるんでしょ?もう展開読めました。
と待っているが一向に出てこないので覗きに行くと井戸の中に紙が入っており、
【只今点検中】
と書いてあった!!作動しないんかい!!
しかしその先の少し進んだ所でダンボールで器用に作ったブラウン管テレビの画面のところをくり抜いて幽霊役の落武者が禿頭を出して
「ぐわーーーー!!」
と言って出てこようとしている!!
そしてつっかえてダンボールがバリッと裂ける音がした!
「!!」
と落武者の動きが止まり、とりあえず私たちを睨みつけたので、もう見なかったことにして先に進んだ。あーあ、後からテープて補修するんだろうな。可哀想に。
そして今度はなんと、全身タイツで頭だけ犬の被り物を被った人が歩いてきて名刺を渡した。
【人面犬】
「飼ってくれや…わしを飼ってくれや!」
とか言いながら近づいて来る!
ある意味怖い!
「お嬢様、飼います?あれならうちでもなんとか」
「ふっざけんじゃないわよ!飼うわけないでしょ?クソ可愛くないわ!」
と怒鳴るが、また後ろに見えない角度で腹パンされ
「ぐうっっ!」
と私は抑えた。
出口付近ではお化け達との顔ハメパネルの記念撮影場所が設置されていた。右にはナマハゲ。左には落武者。そして真ん中には人面犬で、人面犬の顔だけ抜かれていて、そこに顔をはめるようになっている。
「お嬢様。記念に撮影しましょう!さあどうぞ!」
と魚住は完全に面白がりスマホを取り出した。
「あら、魚住。貴方を取ってあげるわよ!」
と私は負けじとスマホを取り出す。あんたがあのバカみたいな顔ハメパネルに顔をハメなさいよ!!
「いえいえ、お嬢様の思い出作りに必要でしょうから!」
と魚住はパネルの方に私を押した。
「やだわ、私はいいわよ!!魚住こそ思い出を作った方がいいわよ!」
と私も魚住の後ろに周り、背中を押そうとした隙に魚住がすかさず私のスマホを奪った!!
ああっ!!
「ふふ、お嬢様。大丈夫です!お嬢様のスマホで撮影し、待ち受け画面に設定しておきますから!」
とか言いやがった!冗談じゃないわよ!私の待受は推しBLの絡みなのよ!
しかも魚住が電源を入れたら見られる!私の推しの待受が!!
そんなの見られたらまたキモイとか言うのよ!私は必死でスマホを返せとピョンピョン跳ねた。
「返しなさい!」
「ダメですって!お嬢様!ははは!」
と上の届かない所にスマホを掲げる魚住。
それを後ろから見ていた殺気が膨れ上がり、とうとう黒ずくめの女が動いた!!
先程の人面犬を連れて来てこちらに投げた!
「ぎゃあ!!」
「お嬢様!危ない!」
と魚住は私を庇うため前に出た隙に私は魚住の手のスマホを
「てやあっ!!」
と叩き落とし踏んづけた!!
やったわ!これで待受見られなくて済んだ!
しかし、魚住が結果的に私に抱きつく形になり、人面犬はパネルに激突し、パネルがぶっ壊れ、スマホがぶっ壊れ、黒ずくめの女…綾さんがブチキレて
「暗がりで何をしてるの!拓磨!美玖様!!」
とついに声を発した!
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