第13話 修羅場ってやつかしら

とうとう綾さんがブチキレた。

嫉妬に狂い、我を忘れて怒鳴る。


「その声は…姉さん」

と魚住は冷静に言うが、まだ私に抱きついていた。


「拓磨…。その女…美玖様に誑かされたのね?可哀想に。いくら雇い主の娘だからと弟を犬にする外道女なんかを庇うことないわ!」

と綾さんはサングラスを取る。

その下から美しく可愛いらしい大人の女が出てくる。


瞳は潤んでおり、守りたい女だ。

しかし瞳を潤ませながら


「拓磨…美玖様のこと好きなの?」

と、とんでもないことを言いよった!

やめてよ!気持ち悪い!こんな奴、顔がいいだけで性格は最悪だし、オタクだし、いい所顔しかないのよ?


「姉さん…。実は…そうなんです!」

と乗りやがった!!やめろ!マジで!


「洗脳…されてるのね?可哀想に拓磨!私の拓磨…」

と言う。


「あ、綾さん…どうしてここにいるんですか?」

とりあえず魚住から離れると私は言うと


「日本に戻って来て、拓磨に会いたいからホテルを予約したのに


『今日は遊園地デートの予定があるから』

って断られたの。だから…拓磨の居場所を霊能者にさぐり当てさせて私は駅から見張っていたの。


普通のクソ女なら秒で気絶させてやろうと思ったけど相手が美玖様だったから、仕方なくつけて来たわ」

と綾さんはとんでもないことを言う。霊能者で居場所を探り当てた?魚住の綾さん用のやつがGPS機能がついてないからだろうけど、まさか霊能者投入してくるとは。


「姉さん…いい加減に俺のことを諦めてくれないか…。俺はあんたの弟だぞ!?」


「そんなことわかってるわ!でも、拓磨が好きなの!顔がいいもの!!」

と言う。やはり顔だけかい。


「綾さん…魚住はこう見えてアニメオタクなんですよ?後、口も悪いし、トイレは長いし、料理はできるけどケチだし」

と言うと綾さんが


「は?そんなの知ってますけど?ていうかなんで美玖様が琢磨のこと、そんなに詳しいのですか?雇い主の娘ってだけで友達もいないぼっちのくせに!


それに拓磨のアニメ好きは私が他に女に興味が持てない様に勧めたのよ!」

と言い、魚住が


「えっ………」

と絶句して引く。

まあ、そうよね。魚住はきっと知らなかったでしょうね。


「綾さん…魚住は私の執事だから昔から私と魚住が恋愛関係にならないことを知ってるじゃないですか!」

と私がフォローすると綾さんは


「でも、拓磨は…きっと美玖様のことが好きなのよ!今日だって陰で見てたら愛しそうに美玖様を見ていたし!」


それは貴方に諦めてもらう作戦です!とは言いにくい。


「姉さん…その通り!姉さんが俺に禁断の恋をしてる様に、俺も決して叶わない恋をしてるんだ!!」

と魚住はいきなり私の手を握りしめた!

ぎゃっ!やめて!綾さんが青ざめていく!!



どうしようと思ってると人面犬の人が


「すみません、お客様。そう言うの一旦外に出てからやってください」

と言われ、私達はお化け屋敷から出された。



綾さんはボロボロと泣いており、私はハンカチを差し出すとバシンと投げ捨てられた。


「同情するなら拓磨を解雇して!!」

と叫ぶ。


「え、いや、私の一存では…。お父様に言えば…」


「だからあんたが、そのお父様に解雇するように言えば、拓磨は一生、私の元で好きなアニメを見て暮らせるの!!もちろん私の部屋で!!」


「俺の人生を勝手に捻じ曲げないでくれ。魚住家の男は小檜山家の執事になる教育を幼い頃から受けてるの姉さんも知ってるでしょ?


つまり俺はお嬢様に一生使える身だよ。逆に言えば就職活動をしなくて済む、楽な相手なんだ!」

お前、本心言うなよ。就活学生に謝れ!


「姉さんだって琢磨のこと一生可愛がってあげれるわ!就職もしなくていいの!アニメだって見放題よ?」

と綾さんは反撃した。

ていうか、姉弟の問題だし、私を巻き込むな。


「うるさい!なんで俺がいい歳して姉さんと暮らさないといけないんだ!俺を変な目で見るのとか、俺の毛髪集めたりとか切った爪集めたり俺の一部をコレクションしないでくれ!」


「うわ、キモ…」

思わず口に出てしまった。

綾さんが睨みつけて


「うるさい!鼻から牛乳だすお嬢様には言われたくないわ!!」

と叫んだので周りがザワザワしてきた!


「おい、嘘だろ?あの子が鼻から牛乳!?」

「人は見た目によらんな」

「ぶふふふ、微妙に可愛いのに残念」

とギャラリーが注目する。


「や、やめてください!あれは!宴会芸でお祖父様がやらせたのよ!!」


「でも器用にだしたじゃないの!!」


「出してましたね!見事でした!俺は鼻から牛乳出せるお嬢様が好きです!」

絶対お前私を面白がってるだけでしょ!?


「そ、そうなの拓磨…。私…それなら鼻から牛乳を出すの練習するから!」

と言うとギャラリーがまたざわめいた!


「や、やめたれよ!可哀想に!」

「あんな美人が鼻から…可哀想すぎるだろ!」

「絶対阻止!」

とか言ってる。私との差は何?

私ならオッケーなわけ?


「とにかく、姉さんもいい相手を見つけて幸せになってください!」


「拓磨…」

と綾さんはしゅんとした。まあ、姉弟だしそこは仕方ない。


「美玖様は本当に琢磨のこと何とも思ってないの?拓磨の片想いだけなのね?


もし両想いなら事故に見せかけて…」

と綾さんが言うから慌てて


「な、何を?私は執事に変な気持ちなんか持ってませんわ!ほほほ!


綾さんたら心配症だわ!!今日のデートも別に遊園地で普通に遊びたかっただけなのよ。


ねぇ、魚住?」

と言うと魚住は


「はい。ぼっちのお嬢様が俺とのデートを所望しておられたので嬉しくて!」

余計なこと言うなっ!!


「なに、拓磨を求めてるの!いやらしい!!ぼっちならぼっちらしく1人で遊園地いきなさいよ!拓磨を巻き添えにしないで!」


ええええー!?

それ、何が楽しいの?

いや1人で遊園地とか心が荒むわ。

ていうか行こう言うたのお前の弟だよ!!

だが、そこで


「そうだ、1人で遊園地行け!」

「この美しい姉弟に割って入るな!凡人!」

「お姉様を心配させるな!」

となんかギャラリーがうるさい。

てかもう嫌。


「わ、わかったわよ!!もういいわよ!もう知らない!綾さんに責められるのもこれ以上、魚住に付き合うのもやめる!


私はもう帰るわ!!」

と私はくるりと帰ろうとしてグチャッと何か踏んづけた。


まさかのう●こだった。

ギャラリーから爆笑され、恥ずかしいやら情けないやら。


「お嬢様、最後に仲直りに皆で観覧車に乗り帰りましょうか。あ、靴は捨てていいですよ」

と言うと魚住は私をお姫様抱っこ…じゃなくて肩に担いだ。荷物か!


「姉さんも行きましょう、流石にこれ以上は恥ずかしすぎます!」

と言い、綾さんはコロリと


「拓磨がそう言うなら(♡)

と言い、一緒に観覧車に乗車した。


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