第11話 ガチでヤバいわよこのデート2

ゲートを潜り抜けると、看板がバンと立っていた。


【当園は3月31日で閉園となります。


ご利用いただいたお客様に感謝いたします!

残り少ない開園ですが従業員一同、|一丸(いちがん)となり、お客様に素敵な思い出をお作りします】


と書いてあり、なんか客より従業員の|方々(かたがた)が素敵な思い出を作るべきよね?

と思ったが、とりあえず後ろの殺気が怖いから大人しくしておく。


すると汚れたうさぎのゆるキャラが近付いてきて


「記念にお写真を撮りましょうピョーン!」

とスマホを出せと手を出してきた。


可哀想に…中の人。きっともう潰れるからクリーニングに出す必要もないから汚れたままにしているのね?


つか、クッサ!!

やっぱりクリーニングするべきよ!客に爽やかな香りを提供しなさいよ!よく見たらあんた、カレー染みついてるわよ!黄ばんでるわよ!汚いわね!

逆に嫌な思い出できちゃった!!


「お嬢様、もっと近寄らないと!」

と魚住が肩を掴んで私はひえっ!?となった。ぎゃー、無駄にイケメン怖っ!



「はい、チーズ林檎ピョーン!!」

とカレー染みうさぎが言う。チーズ林檎って何?


林檎いらないでしょ!?チーズ林檎って何なの?


パシャリとカレー染みうさぎはスマホを返してくれた。スマホ少し臭くなった!!


「お嬢様、チーズ林檎はこの遊園地の名物料理みたいです」


「え!?あるの!?ていうか、あれ宣伝サブリミナル効果だったの!!?


や、やるわねうさぎ」


「看板に全力でと書いてましたし、チーズ林檎を絶対に買わす気でしょうね」


と、よく見ると園内の壁に張り紙や矢印で


【チーズ林檎はこちら!!】

とか誘導している!!どんだけ買わせたいの!?逆に絶対食べたくないんだけど!?


「お嬢様、ほら何乗ります?ジェットコースターとかありますよ」


「嫌よ。酔うし、化粧や髪が崩れっ…」


ドスッ!


「ぐううっ!」


魚住は後ろの黒ずくめの女にバレない角度で的確に腹殴ってきた。こ、このクソ執事が!!



「……そ、そうね…。ジェットコースター…乗りましょうか、魚住…」


「はい!では参りましょう!」

と私達は後ろの黒ずくめの女を引き連れ、ジェットコースターに乗り込むことにした。前にはラブラブなカップルがいた。真ん中は私達、綾さんは1番後ろに1人で乗った。後ろからの威圧が怖い。


前のカップルが


「これ、終わったら【チーズ林檎】食べに行こうぜ!」


「いいわね!【チーズ林檎】」

と言った。


「どうやら彼等は客に扮した従業員ですね。サクラまで使いチーズ林檎を買わせようとするとか…」


「…絶対買わないわ」


とコースターがガタンと動き出した。あーー、やだわー。これ怖ーいとか言いながら魚住に抱きつくやつよね?


ガタンガタン


とコースターは上まで進み、いよいよだ。それなりの角度から一気に落ちて加速して、せっかくの私のサラサラヘアがバッサバッサと、左右に揺れていく。つか、酔う。気持ち悪っっ。


「きゃー…こわ…」

と魚住にしがみつこうとしたら魚住は

隣で既に気絶し、白目になっていた。


ええええええええ!?


あんたが気絶してどうすんのよおおおお!ていうか自分だけ気絶とか無いわ!


うえ、気持ち悪い!酔う!


しかしチラッと見えた後方の女も同じように白目で気絶していた!!


さすが姉弟ー!似てるわ!!


前のカップルは


「ひええええ!チーズ林檎おおおお!」

とまだ宣伝してた!!


私はガタガタ上や下や横に揺れて行くコースターに酔いつつ…


「うえおおおお、げええ。降ろせっ…助け……うええ…」

とか言いながら、もういっそ気絶した方が楽な気がしてきた!


ようやくコースターから降りた魚住はヒザガクで


「お嬢様ったら、俺にしがみつきすぎでしょ!?」

と笑っていた。

いや、どんな夢見てたの??

後ろの女もヒザガクで殺気飛ばしてくるし!!


お前ら気絶してたくせによ!

とりあえず一旦、ベンチで休み、酔いを覚ましてから


「お嬢様、射的があるみたいですよ」

と魚住が。ようやくヒザガクを治して指差すと確かに射的みたいなのがあった。


「小さな遊園地にはこういうのがあるのね」


「予算が足りないんでしょうね。メンテナンス費用とかあるし」

と近付くとおじさんが


「いらっしゃい!!10発100円ね!」

と言う。


台の上に特賞、スカと二つしか的がなかった!


「簡単そうですね!お嬢様みたいなポンコツでも取れそうだ」

とヒソヒソと喋る魚住に睨み


「私やってみるわ!!」

とおじさんに100円を渡して私は銃にスポンジみたいな軽い弾を詰めて狙いを定めた。こんな簡単なヤツ外す方が難しいわよ!!


と構えて打った!!


スパン!!


と特賞に大当たりした!


「おめでとう!!」

とおじさんはにこやかだ。


「わー、おめでとうございます、お嬢様!!」

と魚住ができて当たり前みたいな顔した。誰でもできるわよ!



「じゃあこれ、特賞の【チーズ林檎】ね!!」

とチーズ林檎をおじさんが持ってきた!!

なんてことなの!!全ては布石!

この為の!どうあってもチーズ林檎からは逃れられない私達だった。

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