第10話 ガチでヤバいわよこのデート1
日曜日…。
アパートで支度をして魚住は先に家を出た。
魚住はスマホを二つ持っていた。
一つは自分ので、もう一つは姉用のスマホだ。この姉用スマホはGPS機能等を搭載していない。
魚住が警戒して綾さん専用のスマホと分けたのだ。更にカメラもついていない。セキュリティソフトだけはガチガチに入れている。
綾さんがハッキングしないように配慮されている。
まあ、普通そこまでする人はいないが、綾さんは弟に本気で迫る危ない女なのでこれくらいは普通にしている魚住だった。
私は慎重に家を出た。駅前で落ち合う予定だが、裏道を通り、少し時間をかけて駅前の時計台の前に魚住は、やはりスマホを持ち、待っていた。
一応イケメンだから目立っており、チラチラと女性達の視線が集まっていた。
そこで何か見覚えのある視線を感じた!!
どこかで…綾さんが見ている!!
背筋が凍りそうになるのを抑えつつ、
「う、魚住!待ったかしら?」
「お嬢様、いいえ。今来たところですよ」
といつもとは違い、丁寧だ。まあ、綾さんがどこかで見ているから仕方ない。
本来なら、
「遅えよ!?何で遅れるんだよ!このポンコツお嬢様が!」
くらいは言うだろう。
「そ、そう。ま、まあ当然よね。執事は先に来てなきゃだものね。私は近くまでタクシーで来たのよ!おほほほ!」
と嘘をついた。魚住はとりあえず私の手を取り
「お嬢様、では参りましょうか」
と普段絶対見せないスマイルをした。打ち合わせ通りだと、そう遠くない、庶民的な小さな遊園地らしい。
「ええ、そうね。では行きましょうね。私、庶民の遊園地初めて」
とこちらも普段こいつなんかには絶対見せないスマイルで返した。
ああ。勿体無いわね、私の薔薇スマイル…。安くないのに。
だが、後ろから殺気を感じるので綾さんが見ていることは私達はもはや勘付いていた。
*
庶民的とか言いつつ、電車に乗り(魚住が泣く泣く奮発した)
バスに乗り継ぎ、私達は移動する。ていうかバス…結構揺れるわね。めちゃくちゃ酔った。吐きそう。青い顔をしていると
「お嬢様、大丈夫ですか?顔色が青いですよ?」
と、エチケット袋を取り出した。
何故、お前そんなものを持ち歩いてるの?
ていうか、バスの中で吐いたら他の客に迷惑どころかゲロ女として見られ、更に後ろに座っている黒ずくめの服とサングラスを付けた、あれでバレてないと思ってる綾さんにも引かれるし。万が一魚住に、一滴でもゲロが飛んだら…しばかれる。
ということで私は吐き気を何とか抑えて、ついに遊園地の側の停留所に止まるとまずトイレへ直行した。
普通なら彼氏と
「わぁ!やっと着いたね!」
「今日は楽しもう!」
みたいな始まり方だが、まずトイレ。これが現実だ。
そして私は盛大に吐いた。ああ、気持ち悪いけど吐いたから少し楽だわ。乗り物とか乗りたくないわ…。何で遊園地にしたのよ。もしや、乗り物酔いに弱い私に対する嫌がらせ?魚住。
あいつなら言葉や態度に出さなくてもやるだろう。クソだから。
トイレから出ると魚住が
「お嬢様!大丈夫ですか?飲み物を買っておきました!」
と渡してきたが、よく見ると
【う●こ味再現?(品質には問題ありません)栄養ドリンク】
と書いてあり、思わず地面に叩きつけようかと思った。
しかし綾さんが、後ろから木の影にチラチラ隠れているのが見えたので、耐えた。
魚住、あんた後で覚えてなさいよ!
「うふふ、優しいのね、ありがとう。大切に飲まなくちゃ!」
と言い、カバンにしまった。誰が飲むかよ!こんなもん!!
こうして私達はようやく遊園地の入り口へ入った。これから始まる地獄の遊園地デートへと!
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