第4話 光と影

 翌日。彼女に連れられて俺は仲間たちに紹介してもらうこととなった。

 盗賊の女に戦士の男。それからリーダーらしき剣士。盗賊と戦士に俺はかなり疑り深い目を向けられていたんだけど……。


「彼女の推薦だ、僕は信じるよ」


 剣士の男が優しげな口調で告げ、彼女は嬉しそうに微笑んだ。


 俺は一瞬でこいつが、この剣士の男が嫌いになった。自分のことを疑っている男よりも嫌そうな顔を見せた女よりも、自分を庇った男のことが嫌いになった。

 何故か。好意を持った女性と明らかに深い仲であることを察したからじゃない。

 ──直感だった。この男は俺と何もかもの相性が悪い。光と影が決して混ざり合わないように、空と大地がかけ離れているように、俺はこの男と絶対に分かり合えないと、そのときに理解した。

 幸いにも内心を隠すのは得意だったので、嫌悪感が表に出ることはなかった。


「よろしくお願いするよ」


 剣士の男は俺に歩み寄ると、片手を差し出した。一瞬だけ間を置いた後、俺はその手を握った。

 リーダーの決定に盗賊の女も戦士の男も、渋々って感じだけど従った。

 彼らは俺の実力と人間性が不安だったようだけど、俺も同じような感想だった。強力な魔法使いに、果たしてこんな集団で勝てるのだろうか。


 まぁでも、案外なんとかなるものさ。そう楽観視することにした。


 その後は簡単な自己紹介を経て、旅に必要な物資の調達、今後の旅路の確認などを行なった。

 旅なんてものは初めてだし、なんなら特定の集団で寝食をともにするのも学生時代以来だったから、正直かなり不安だった。やめておけば良かった、という考えだって浮かんだぐらいだ。

 それでも、好きな女性に頼られて断れるかい? 俺は無理だったね。


 旅の支度を整えて、街の出入り口へと向かう。一度だけ、俺は街を振り返ってみた。

 退屈な日常ばかりで、いいことなんてあんまりなかった。けど、何年も住んでいた街を出ることに、少しばかりの哀愁も覚えていた。

 次にこの街に生きて帰ってくるとしたら、そのときはかなりの知名度になって帰ってくることになる。それぐらい、敵は危険な相手だった。成功する姿なんて、ほとんど想像がつかなかった。だから、帰ってくることはないんだろうな、と、ぼんやりと思っていた。


 あまり恐怖心がなかったのは、あくまでもぼんやりと思っていただけだっていうのと、自分の命と人生に、もはやそんなに価値を見出せなかったせいだ。死んだら死んだで、まぁいいか、って感じだ。


「行きましょう?」


 彼女に声をかけられて、俺は街の外へと一歩を歩みだした。




 ──結論から言えば、街に帰ることはなかった。けど、死んだわけでもなかった。

 何があったかは、聞いていれば分かるさ。

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