第4話 あり

「もっと逆にというか、ポジティブに考えられませんか? 占いの結果が最悪だってことは、注意深く行動するようになるから、被害も最小ですむかもしれないって」

「あ、なーるほど。そういうのもありなのかな? でも、占いって、大抵半日過ぎると忘れちゃうんですよねぇ〜」

「課金してるのに、ですか?」


 ずいぶん食い下がってくるなぁ。どうしたものか。あれ? あたし、課金したってこと、言ったっけ?


「うん。だって、当たるも八卦、当たらぬも八卦っていうし?」

「じゃあ、なんで占いなんかするんですか? 課金してまで」

「君さぁ。さっきからなにをそんなにムキになってるのかな? あたし、なにか悪いこと言った?」


 あたしの指摘でようやく気がついたのか、彼は小声でごめんなさい、とあやまって、うつむいてしまった。


「ごめんなさい」

「もういいから。別の話しよ? できれば楽しいやつ」

「ごめんなさい、それ占ったのおれなんです」

「ええええええ〜っ!?」


 まさかまさかの占い師かいっ! って、自分の運勢は占わないのかな?


「おれ、昔から直感だけは優れていて。ちょっとバイト感覚で始めた占いなんです。だからその、当たるとか言われると、本当に恥ずかしくて」


 これはこれは。どう返すのが正解なんだろう? 彼はあたしの今年の運勢を占った占い師だった。


「今年の運勢が最悪だって、言われた人の気持ちわかる?」


 なぜだかあたしも、後に引けなくなってしまった。


「ムカつきますよね? 殴ってもいいですよ。おれ、こう見えても鍛えてるんで。少しくらい殴られても――」


 ってグズグズ言うから、彼のお腹にパンチした。


「ぐはっ。結構なおてまえで」


 あたしはお茶か!? むしろお花になりたいわっ。


「あの。だったら、おわびとして、改めて占いましょうか?」

「ひぇ?」

「本当の専門は、手相占いなんです。まだ駆け出しだけど」


 手相? でも、そこでも最悪だと言われてしまったら、あたしはどうすりゃいいんだい?


 つづく

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