第2話 ださ

 エレベーター内はすでに真っ暗。くっそ、スマホどこだっけ? って、カバンをあさっていたら、思わぬ方向から光があてられてテンパってしまう。


「あの。大丈夫ですか? 大丈夫ですよね? ケガとかしてないですよね?」


 思わずうっとりしてしまうほどのイケボに圧倒されて、こんな状況じゃなければ出会えなかった奇跡に感謝する。けど、まだ若すぎるな、彼。


「あ、はい。すみません。ちょっとカバンの中を照らしてもらってもいいですか? あたしもスマホ出すので」

「いいですよ」


 暗いエレベーターの中で、若い男の子と二人きり。やだ、意識したらなんだか動きがぎこちなくなる。


「あった。ありました。ありがとうございます」

「よかった。じゃおれ、警備会社の人と連絡を取るので、しばらくライトお願いしてもいいですか?」

「ああ、はい。よろしくお願いします」


 彼は、エレベーターの緊急用のボタンを押した。


 けど、なにもてごたえがない。どういうこと? 新年だから、警備員も休みなの?


 どうしていきなりこうなるのよ〜!!


 ああ、あの占い、マジで大当たりだわ。


「うーんと? じゃあ」


 けれど、彼はなんてことがないみたいに、エレベーターのボタンの下に、申し訳程度に付いているQRコードを読み取っていた。いったいなにをするつもりだろう?


 つづく

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