第2話「プロローグ②ークラウディア海岸の夜更け」
**************************************
”ザザーン”
夜のクラウディア海岸は佇む。
遠くに見える灯台を目指して、月明りの道が滔々と橋を架ける。
”ああーっあぁぁー”
波の音の
女の泣く声がする。
“パシャッ” ”パシャッ”
波が跳ねて弾かれる音もする。
”あぁーっ” ”あぁーっ”
女が泣いているのか、それとも波と岩のこすれの反響なのか、分からない。
でも確かにむせび泣くようにも聞こえるそれは、クラウディアの砂浜にも届いて来る。
「あぁ……。
また泣いてる。
何がそんなに悲しいの……。
……僕にも教えて欲しい。」
男は砂浜から海を眺めて呟く。
“パシャッ” ”パシャッ” “パシャッ” ”パシャッ”
波は弾かれリズミカルに跳ねた。
“ああぁ抱きしめて。私を強く。そして愛して。”
女がこう言っている。
……男は何故かそう思う。
「君は僕の唯一の灯台さ。
君が笑って光り輝くなら、僕は死んでも構わない。
だから……。さぁ僕の事も愛しておくれ。」
男は左手を海に掲げ、“さぁ、この胸に飛び込んでおいで”と言わんばかりの顔をしている。
“パシャッ””パシャッ”“パシャッ””パシャッ”“パシャッ””パシャッ”
波が六連符の様に弾かれた。
クラウディア海岸から見える灯台はもともと一つだった。
それは若干ピンクがかった白色をしていて、とてもキュートなデザインだ。
恋人同士はその灯台の元に小さな花の種をお互い植える。
それが並んで実ったらその恋は愛に花開く。
そんな恋のおまじない。
しかし、つい最近、クラウディア海岸から見える灯台が一つ増えた。
突如として“ダンジョンの塔”が現れたのだ。
そちらの塔は若干水色がかっていて、そちらもキュートである。
そう。
灯台は二つある。
「もう、ワターク!
そんな訳の分からないことばっかり言って!!」
男が付けた砂浜の足跡をたどり、女がやって来た。
「あぁ、ユラーハ!
君こそが僕の唯一の灯台。
さぁ、その美しい唇をこの僕の口と触れさせて!」
ワタークはユラーハを見つけると、ドタドタとユラーハに向かって走って行く。
「さっき、海の女にも言ってた……。
同じ事言ってたじゃない!!
唯一の光って!!
ワタークの事なんてもう知らない!!」
”トン”
女は男を突き飛ばし、拗ねて走り去っていく。
“ドボーン”
「あぁあぁぁぁぁあ!!
ユラーハァ!!
待ってーーー!!」
ワタークは海へ弾き飛ばされた。
女は軽く小突いただけなのに、男は凄い勢いで海へダイブすることとなった。
……そう。
ユラーハは人間ではなかった。
ウンディーネだったのだ。
ウンディーネとは水を司る精霊である。
人間のワタークと、精霊のユラーハ。
相容れない二人の恋のお話が、このクラウディア海岸にはあった。
**************************************
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます