第20話 一代男爵になりたい父アウダークス⑤
「まず言っておきますがテクトゥム=ルブラム家で、いまの事業を継続していらっしゃれば、経営者としての確かな『実績』を余人に示すことができましょう。
5年もすればこのような金銭など無くとも市の方から一代男爵受任のお話はかかると思いますよ。そうだろう、室長?」
「代官。おっしゃる通りです。
テクトゥム=ルブラム家は長年イッタ市に貢献しております。今回の相続で先代とその弟の間で問題が発生しておりますが、それも時間とともに人は忘れます。テクトゥム=ルブラム家の家令ティモンはイッタの市中の商家の家令の中でもひときわ優秀です。その彼と力を合わせて本業に励み納税をして居れば、先代までのように市の方から打診をする予定です」
「だ、そうですよ。父アウダークスさん。そうすれば、その頃にはこのお金は何倍にもなっているでしょう? テクトゥム=ルブラム家とその家令ティモンにはその力がある。私はそれが良いと思いますが……」
代官アスカールと秘書は実質ゼロ回答をする。実績もなく、問題を引き起こしている今はダメだ。拗れた相続のほとぼりが冷めるまで、黙って事務所の当主の席に座り、家令と番頭に任せて上がる利益で納税の実績を示せ。と言うことであった。
「俺はそれでは遅いと言っているのだ!
俺には今その肩書が必要なんだよ!
一代男爵の肩書が。
5年後にくれるって言うなら、今くれてやってもいいだろう。
金も持ってきた。なにが気に入らないって言うんだ!」
父アウダークスは怒りで震える声でそう怒鳴ると顔を真っ赤にして立ち上がり、代官と室長を睥睨する。
「まぁ、まちなさい。父アウダークスさん。君は若い。そうやってすぐに激高して大声を上げるのは結構だが、それは弱者にしか通用せんよ。少なくとも長年政治の世界で化かし合いをしている私や秘書課の連中にはまったく通用しない。まったくもってスマートでないね。自らの底の浅さを証明するようなものだ。
そういうやり方はテクトゥム=ルブラム家の者にも通用しなかったのではないかね?」
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