第10話 夢姫、決意する。(10)
「いつもの感謝会と変わらないものでいいのかしら?」
潤んだ瞳に、第一王子は倒れそうでした。しかしそれをぐっと堪えて続けます。
「もちろんです。むしろ十分です。姉上はお相手を喜ばせる天才です。ですから、面倒姫様のお好きな物などを下調べすれば、きっと面倒姫様に喜んでいただけるもてなしができるはずです」
弟の励ましに、夢姫の心は幾らか上昇しました。第一王子が直接補佐となるのも、彼女の安心材料となりました。それに目の前には、いつでも頼れるお后様もいます。夢姫は一瞬だけ大理石の床を見つめると、ぐっと力を込めて顔をあげました。そして、凛とした声が謁見の間に響きます。
「王様。面倒姫様をもてなす役を謹んでお受けいたします」
夢姫の決心に、王様もお后様も目頭が熱くなりました。第一王子も「胸がいっぱいで今夜は食事が喉を通りそうにない」と思っています。夢姫の返答を聞いていた侍従らは、手放しに喜び合い、指笛を鳴らして祝福している者もいます。
王様がこほんと咳払いをすると、謁見の間の騒ぎはたちまち収まりました。夢姫もお后様も第一王子も一様に王様へと向き直ります。
「それでは正式に命を下す。夢姫には面倒姫のもてなし役を、第一王子にはその補佐役を命ず」
「ありがたき幸せ」
「ありがたき幸せ」
夢姫とお后様は淑女の礼を、第一王子は騎士の礼をとりました。これで今日から面倒姫をもてなす準備をしなければなりません。まさか久しく足を踏み入れた謁見の間で、役目を与えてもらえると思っていなかった夢姫は、心なしか清々しさで満たされていました。
「それじゃあ、頼むぞ。楽しみにしておる」
目尻に皺を寄せた王様も、清々しさで一杯でした。これまで夢姫には安全な道しか示してきませんでしたが、あえて厳しい道を示す親としての誇らしさを感じたのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます