第11話 夢姫、決意する。(11)






 王様から面倒姫の役をもらってからというものの、夢姫は大層忙しくなりました。面倒姫が王城へとやってくるのは来月の中頃です。もうひと月もありません。面倒姫に滞在してもらう部屋の準備から、食べてもらう毎日の料理の御献立まで、夢姫は抜かりなく準備を進めました。

 

 その中でも夢姫が手こずったのが、お茶会です。面倒姫が滞在されるということを主要な貴族のご婦人やご令嬢方々にお知らせする意味も込めて、彼女らとの交流の場となるお茶会を開催しなければなりません。

 

 ところが、夢姫には交流を持つ貴族のご婦人もご令嬢もおりませんでした。もちろん、この国の貴族のことなので、どの家にどのご婦人とご令嬢がいらっしゃるのかということを把握してはおりましたが、どなたをどんな風にご招待すれば角が立たないのか、ということが分からなかったのです。

 

 それゆえ、招待する者が決まった後も、席次表をどうすれば良いのか頭を抱えましたし、どのような料理やお菓子を準備すれば喜ばれるのか、皆目見当もつきませんでした。夢姫が赤ん坊の頃から傍に着いている乳母からは「お后様にご相談されてみては」と助言をもらったものの、自分が任された役でお后様のお手を煩わせてはいけないと、お后様に相談することもできませんでした。

 

 そんなときに頼もしかったのが、第一王子でした。彼は事前に夢姫が直面しそうな壁を予想していたので、貴族の人間関係の調査も行っていたのです。さすがに誰が何を好物としているというところまで調べきることはできませんでしたが、力を持っている家はどこなのか、家同士の繋がり等、事前に知りえることを夢姫に伝えることができました。

 

 面倒姫を迎えるまで十日となる頃、それは起きました。なんと、面倒姫の一行があと三日で到着するとの知らせを持った早馬が到着したのです。まさか、面倒姫が一週間も早く到着するなどと誰も予想していなかったので、城中は焦りの渦へと引き込まれていきました。もちろん、最も狼狽えたのは夢姫です。


「どうしましょう!あれも、これも間に合いませんわ!」

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