第7話 夢姫、決意する。(7)
「此度、二人を呼び出したのは、ある役目を遣わそうと思ってな」
王様の目の奥がきらりと歪みました。夢姫も第一王子もそれを逃しはしません。二人ともごくりと王様に聞こえそうなくらいの音で唾を飲み込みました。
「役目、ですか?」
返答をしたのは、第一王子でした。
「ああ、そうだ。来月の中頃、隣国の姫君をこの城に迎え入れることになった。遊学のために滞在なされる。その姫君のもてなしを、お前たちにやってもらいのだ」
夢姫と第一王子は同じ顔で驚いて顔を見合わせました。王様はそれを満足げに眺めています。二人が驚く顔を楽しみにこの瞬間を待っていたからです。
「なにか聞きたいことはあるか?」
王様の問いかけに、第一王子が「わたくしからお尋ねしてもよろしいでしょうか?」と答えました。
「よい。なんだ?」
「隣国の姫君をもてなすということは、公務ということでしょうか?」
第一王子は、夢姫のことを一瞥しました。夢姫はこれまで、公の場に姿を現したことはありません。なので、もしこれが公務ということになれば、夢姫にとって初めての公務になります。
「ああ、そうだ。相手は姫君であるからな。隣国の姫君をもてなすのを、夢姫が主体となってやってほしい。その補佐として、王子に就いてもらいたい」
王様の意向に、夢姫と第一王子はもう一度同じ顔で顔を見合わせました。とてもよく似た姉弟です。傍で控えている召使らは、笑いを堪えるのに必死でした。謁見の間には同じ顔の親子が三人も居るのです。
愛らしい姉弟の仕草に我慢できなくなったのは、父親でした。謁見の間中に響く声で「わっはっは」と笑い声をあげます。
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