第2話 夢姫、決意する。(2)

「ええ。日中の東屋はとても暖かくて心地が良いのです。今度はお父様も一緒にお昼寝をいたしましょう」


 屈託のない笑顔でそう言われると、王様は困ってしまいました。それで王様は「これで話を切り上げるか」と思ったのですが、夢姫の正面に座っている人物が王様へ鋭い視線を突き刺しました。お后様です。


 夢姫の母は、彼女が小さい頃に亡くなっています。その後に後妻として迎えられたこのお后様は立派な人で、血がつながっていない夢姫のことを本当の娘のように育ててきました。三人の弟の生母はこのお后様でもあります。弟たちとも分け隔てなく接してくれるお后様のことを、夢姫は大好きです。そういうわけで、王様はお后様に頭があがりません。


 王様はコホンと咳払いをして、話を切り上げることを止めました。


「そうか。確かに昼寝は良いな。しかし、それ以外での楽しみはないのか?例えば、どこかに行ってみたいだとか」


 夢姫はくりくりと丸いお目めを、さらに丸くして王様を見つめました。


「行きたいところ、ですか?」

「ああ、そうだ。王国以外でもいい。遊学に行ってみたいところはないのか?」


 王様の問いかけに、夢姫はくつくつと笑いました。それはまるでそこに薔薇園でも広がったかのようでした。ついうっとりする王様とお后様でしたが、かぶりを振ってなんとか現実へと戻ってきます。


「どうした。なにかおかしいことでもあったか?」

「いえ、すみません。でも、お父様ったらおかしくて。あんなに王城から出てはいけないと言い聞かせてらっしゃったのに、どうして今になって行きたいところなんてお伺いになるのですか?幼いところは行きたいところもたくさんありましたけれど、もう王城から出たいと思うこともなくなりましたわ」


 王様とお后様は愕然としました。王城から夢姫を出さなかったのは、彼女の命を守るためでありましたが、彼女の目標さえ奪ってしまっていたことに気づいたからです。


「そうか……。そうだな。王城から出ないように言ったのは、他でもなくこの私だったな」

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