第3話 夢姫、決意する。(3)
「ええ。ですから、王城を楽しむ術は人一倍だと思いますわ」
王様もお后様も、夢姫に微笑むだけで精一杯でした。その後は三人で好きな音楽の話などをしてお茶会を楽しみました。
その晩、王様とお后様は相談していました。内容はもちろん、夢姫のことです。
「あの子があんな風に思っていたなんて、知らなかったなあ」
顎に蓄えた髭を触りながら、溜め息でもつくかのように王様は零しました。王様はいつも、彼女の命に関わらないことであれば、すべて尊重してきました。夢姫の考え方も知ったつもりでいました。しかし、今回初めて、夢姫の一面を見たような気持ちになったのです。
「わたくしが浅はかだったのかもしれません。姫は、それはもう素直な方なので、当たり前に目標を持っていると考えていました。わたくしの導きが足りなかったのです。王様にも、亡きお后様にも合わせる顔がございません」
お后様は珍しく、その麗しい瞳から涙を零しました。
「后……。そなたのせいではない。私が悪かったのだ。もっとよく、姫の気持ちや考えに触れていればよかったのだ。いや、そうであるならば、今回は絶好のチャンスなのかもしれない。私たちは初めて、姫の考えを聞いて、それを導いてやらねばならないと感じている。だったら、ここからなにか示してあげればいいのではないか?」
王様は自分に言い聞かせるように「そうだ、その通りだ!」と言いました。
「姫はもう年頃を迎えておりますが、これからでも遅くないのでしょうか?」
不安な言葉を口にしたのは、お后様の方でした。眉毛をすっかり下げてしまい、王様を見つめる双眸にも力が籠っていません。自分の教育が悪かったのだと、すっかり意気消沈しているので、弱気な言葉しか出てこないのです。
「人生に遅いなんてあるものか。気づいたときがタイミングなのだ。それを姫も気付かねばならぬ」
「どうしたら、姫も気付いてくださるでしょうか」
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