第14話 報告

 再ダイブ後、三輪さんに連絡をし現在の居場所を伝えるとなんと同じ建物の中にいる事が分かった。集合場所を決め、合流することに――。




 「詩絵ちゃん、こっちだよ」


 店内の奥の方で手を振る、三輪さんの姿があった。入口付近で店員さんに人数を聞かれるが私は、彼と待ち合わせしてます、と伝えると奥に案内される。


 「こんばんは」


 私は挨拶すると三輪さんに促されるまま、ソファーに座る。

 三輪さんの目の前にはすでに注文をしていたのか、シェカラート・ヴォラーレが置いてあり、グラスを回しながら匂いを楽しんでいた。

 彼が飲んでいるシェカラート・ヴォラーレはシェーカーを使用して淹れるイタリア風のアイスコーヒー。あまり見かけることのない珍しいもの。確か作り方はシェーカーのなかにエスプレッソ、ガムシロップ、氷を入れて急速冷却する、だったかな?

 シェーカーによって作られた泡が優しい口当たりになるので、よりマイルドな風味になり、むしろ普通のアイスコーヒーよりも飲みやすいと聞く。

 だが、スタバで売っているなんて聞いたことない。限定商品だっけ? 私が疑問に思っている中、三輪さんが


 「僕が出すから帰りに詩絵ちゃんも、何かお持ち帰りすると良いよ」


 と言ってくれる。


 「良いんですか?やったぁ、ありがとうございます……!」


 アーカロイドでは飲めないが、それは今飲めないだけであって持ち帰れば私自身も飲むことができる。私も何か頼ませてもらおう。目の前で美味しそうに飲む三輪さんを見ていると我慢できない。何にしようかなと、メニューを見ながら考えていると、三輪さんが真面目な顔になり口を開いた。


 「それはそうと、アーカロイドを使ってみてどうだった?どこまでいったんだい?」


 今まで何をしていたのか、そう、この話題こそ私が三輪さんと合流して伝えたかったこと。さきほどまでアーカロイドの一時接続解除用につかっていた――コネクトVVVトリプルV by NIKAMOニカモのプライベートルームのベッドで考えていたことを思い出す。

 だが、人が多い場所といえ、どこで彼らや彼らの仲間が聞き耳を立てているかわからない以上、口頭で話すわけにはいかない。私はポケットから携帯端末を取り出すと、三輪さん宛にメッセージを送る。

 目の前にいながら、携帯にメッセージが届いたことに疑問を抱いた三輪さんだが、私の送ったテキストを見てすぐに納得したようだった。

 、と伝え三輪さんの理解が得られたと思った私は、素早く指を動かし、今までの経緯をテキスト文字にした。その中に以下の事も含めた。


 ・旭川ヒナを見つけたこと。

 ・何か企んでいる者たちがいること。

 ・彼女がその何者かに襲われていること。

 ・私のアーカロイドが空腹の影響を受けて動作不良を起こしたこと――。

 

『……今の話が本当だとしたら、彼らはアーカロイドを何か新薬と勘違いしているだけで、アーカム技術についてはまだ気づいていないんだね』


『そのようですね。博士からのメールにも書いてありましたが、彼女は――旭川ヒナさんは現在、両足麻痺により車椅子での移動をしているようです。そしてアーカロイドによって擬似的にも歩けるようになった。それをどこかで目撃されてしまっているようで』


『車椅子のときの彼女の写真とアーカロイドで立っている時の写真も撮られていて――脊髄が損傷してしまうと今の医療だと完全に治すのは難しい。2つの写真の時期が時期だけに彼女の回復スピードが早すぎるため、博士が何らかの薬を開発してその薬の投与の影響と彼らは考えているんだね?』


『はい。私たちもアーカロイドを初めて見たときは驚きましたから、知らない人がヒナさんのことを見れば、そのように考えてしまうのも無理はないかもしれません』


『でも、どちらかと言うとヒナ自身を狙っているというより、その薬に興味を持っているという感じじゃないか?もちろん、盗撮は良くないが。でもいずれアーカロイドにつながる何かを掴むかんでしまうかもしれない。彼らが何をするか分からない以上、博士には伝えておいたほうがいいかもな』


『あの――ヒナさんには私からも伝えてもいいですか。あの夜見た、と確か彼は言っていました。私自身もただ状況が状況だけに平常心では無かったので記憶が曖昧で……。どこで見たのかまでは分かりませんでしたが、もしかしたら研究所の近くの人間かもしれません。ヒナさんのこと心配です。それに私たちはアーカロイドを使用しているという同じ秘密を抱えていますから。私も力になりたいです』


『……どうするんだ?』


『ヒナさんに会いに行きます。彼女がいる、バイオフロンティア社に』



『……会いにいくのは良いけど、アーカロイドは一旦しばらく回収したい。』


『なんでですか!?』


『説明書に書いてあったんだけど最初のうちは半日程度使用したあと、一度メンテナンスしないといけないんだ。メンテナンスキットも同封されていたから僕の方でできるんだけど。それでもいいかな』


『――そういうことなんですね。分かりました。帰るときに三輪さんのところに寄って預けますね。』


『それで今後のことだけど、怪しい動きがあるのは博士に僕から伝えておく。旭川ヒナさんに会うのは良いけど、詩絵ちゃんは変に首を突っ込まないように気をつけてね。君は僕の代わりのアーカロイドパイロットではあるが、まだ学生だ。そのことは忘れないように。万が一、このこのことで何かあったときは博士と僕で対処する。だから心配しないでくれ。』


『はい。』



『とりあえず、今日はありがとう。途中、アーカロイドの動作不良があったのは大変だったかもしれないけど、データとしては興味深い。また、負荷実験も含めてまた調べてみよう。今後とも協力頼むよ。詩絵ちゃん。』

 



 

 

 


 

 


 


 

 

 

 


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