第3話 弟子へのメール
三輪 大輔 様
こんにちは、いやこんばんはかな? もしくは、おはようかもしれない。
とにかく、しばらくぶりですね、お元気でしたか?僕は元気です。
さて、君に頼みたいことがある。それは近い将来に関わるとても大切なことだ。
だが、内容が内容だけに他の人には頼むことはできない。君だから、私の弟子である君だから頼みたいことなのだ。
久しぶりの連絡なのに一緒にお茶しようとかではなく、唐突な頼みで申し訳ないがやってくれるかね?もちろん君のことだからやってくれると信じているよ。
よし、本題に入ろう。肝心な内容についてだが、まず最初に約束してほしい。
周りに人はいないかな?これから話すことはとても機密な話だからもし周りにいる場合は、人払いするかその人達が帰ったあとにゆっくり読んでくれ。
では周りに人がいないということを祈って話そう。私がなし得た偉業というものを。
私は、先日とある技術の開発に成功した。
それは、君も知っているだろう、それは私の娘のため――――足が不自由な私の娘のための研究だ。
私はドローン技術の応用、人の意思で動かすロボットを作った。
その技術の名はUnmanned Humanoid Remote Control Machine(無人人型遠隔機械)――略してUHRCoM (アーカム)だ。
この技術によって私の娘、ヒナは擬似的だが自立歩行に成功した。とても素晴らしい技術だよ。
だが、外見がロボットのままだと周りに怪しまれる。だから専用の機械により接続すれば使用者そっくりに変わる特殊な素材でつくった。このようにすれば、普通に接しているだけならそれが人間なのか、アーカムなのか判断はつかないだろう。
だが、私は人とアーカムを区別するためにひとつつけていない性能がある。それは『涙』だ。アーカムは、感情表現はできるが涙を流さない。私はアーカムと人間は別物にしたいと思っている。
だからこのアーカムのことを、アーカロイドと愛称でぜひとも呼んでほしい。
相手がアーカロイドということはアーカロイドの使用者しか分からない。それほど普通の人にはアーカロイドと人間の区別ができないほどリアルに作った。
その構造や素材はここでは言えないが……すまない。
これは実際に動かした娘から聞いた話だが、操作中は普段見ている視界と変わらず、ほぼ感覚も一緒だそうだ。むしろ、裸眼でみるよりクリアに見えるそうだぞ。眼球に当たる部分には高性能カメラとレンズを使用しているからかな。
ちなみにアーカロイドから見る視点のことを、UR(アーカム・リアリティ)と呼ぶ。
離れているが、アーカロイドから実際に見ている視界が、まるで自分がそこにいるかのようにそのまま見ることができる。
今のところは生身の人間と感覚はさほど変わらないらしい。自分がアーカロイドを操作していることを忘れてしまうこともあるみたいだぞ。
だから、長時間の試用は気をつけたまえ。もとに戻ったとき、
そうだ、これを説明していなかったな。
アーカロイドに接続するためには専用のコントローラーがいる。
それはUDP(アーカムディスプレイ)とよばれるアーカム専用のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)だ。
それを装着し、電源を入れて設定すればアーカロイドに接続する。
アーカロイドを使えば、寝ながら世界中どこからでもアーカロイドにアクセスし操作できる。
自分はその場にいなくても良いのでいつでも旅行が楽しめるし、日々、仕事がある人でも長期滞在を可能にする。いいだろう?
他にも産業利用として使えば、宇宙進出するためにも利用できる。有人での試験は危険性があるということで宇宙開発はそこまで進んでいないからな。
アーカロイドを使えば、有人宇宙飛行の壁も簡単に超えられる。
だが、軍事利用にされることだけは避けたい。
軍事目的で兵器化されると、世界を揺るがす問題になる。だから、絶対に悪用されるようなことは避けてくれ。
私はこのアーカム技術をいまある既存の、VR(仮想現実)→AR(拡張現実)→MR(複合現実)に次ぐ、もしくはそれらに匹敵するほどの第4の概念にしていきたい。
アーカロイドは今現在、3台ある。
1台目、UHRCoM 0号機は娘にプレゼントするつもりだ。
2台目、UHRCoM 初号機は何かあったとき用の予備だ。これはこちらの研究室で保管する。
そして3台目、この UHRCoM 2号機を君に送ろうと思う。
娘の試用運用だけではいかんせんデータが足りないのだ。ぜひとも君にも協力してほしいと思っている。
ともに技術発展の未来に携われることを嬉しく思う。
ではよろしく!
旭川 秀樹
※追伸
アーカムの操作説明書は添付のファイルを読んでくれ。
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