第2話 貧乏

 入学の日の急な展開に戸惑いながらも、間違いなく時間はすぎていた。

 唯一の悩みである彼女の恨みは晴れた。だが、すぐに悩みは増えることとなる。

 入学式から1週間が経過した休日、彼女から呼び出しがあった。駅の前で待ち合わせらしい。急いで支度し、指定の時刻に間に合った。一番目立つ木の下で彼女は退屈そうに待っていた。

「あ、きた!やっほーー!!」

彼女はいつみても元気だ。それはうざくもあり、可愛くもある。

「ちょっとカフェに寄ろうか。」

彼女に連れられて、カフェの中へ入った。

「2人です!」

「かしこまりました。こちらの席におかけください。」

なかなか雰囲気のあるカフェだ。人は多くもなく少なくもなく、後ろでほのかにジャズの音楽が流れていた。

 だが、のんびりとしている時間はそう長くは続かなかった。

「今日はなんで呼び出したの?」

「それがね、、、」

普段明るい彼女がいきなり暗くなった。

「家が、、、無くなったんだ。」

「、、、え?」

愕然とした。その時、あることを思い出した。彼女をいじめていた理由を。


 彼女は小学生の頃あまりにも見苦しかった。何日も洗濯していない服に、ジリジリの髪、ボロボロの靴。僕はそれが不快でならなかった。しかし、外見は暗いのに性格はやけに明るかった。

「やあ!!!」

僕は急に話しかけられた。その時僕は手に持っていた手で彼女を払った。

「こっちに来ないでくれ!貧乏臭が移る!」

彼女は数秒経った後に泣いてしまった。普通だったら、後悔するだろう。だが、当時の僕はそれを快感と勘違いしてしまった。それから僕は彼女をいじめた。


 今の僕はいじめたことをすごく後悔している。なぜ、いじめたことを後悔できるのか。彼女が貧乏に見えないからだ。

 彼女はセーラー服を身に纏って髪は少し高いポニーテール。貧乏にはみえなかった。

 そんな彼女から家が無くなったと告げられたのだ。しかも、話を聞いていくと、家族がバラバラになったらしい。さらに衝撃を受けた。そのときだった。

「だから、矢野くんの家に泊めて欲しくて。」

「え?泊めて欲しい?」

「だめ?」

「いや、、、いい、、けど?」

「やった。ありがとう。」

この喜び方はいつもの溌剌とした雰囲気とは違っていた。それから、僕らの共同生活が始まった。

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