第3話 疑問

 僕の家は両親共に出張中で家に来ることは滅多にない。今までは家を全部占領していた。だが、そこに家族とは関係ない女が急に現れるのは、知っていても気になる。

「おじゃましまーす。」

元気な声が家中を走る。元々両親が使っていた部屋を彼女に貸した。ご飯などの用事があったらドアを叩き、知らせるようにルールを作った。

「じゃあ、よろしくね〜。」

「うん。わかった。」

彼女はドアを軽く閉めた。

 初日の夕ご飯、彼女のいる部屋のドアをノックし、開けた。そこには髪を解き、もふもふそうな衣を纏って体育座りで本を読んでいる彼女がいた。彼女は本を置いて、

「うん。」

と呟き、部屋を後にした。

「え、料理すごくない?!天才じゃん!」

両親がいなくなって1年半ずっと自炊してきたから料理には自信があった。

「ありがとう。」

「ごちそうさまでした。さて、先にお風呂入っていい?」

「いいよ。じゃあ、空いたら部屋ノックしてね。」

「わかった。」

僕は自室に戻った。自室は風呂の真上なので、少し音が漏れて聞こえてくる。別に聞こうとはしなかったが、勝手に耳に入ってきた。

『はぁ。緊張するよ〜。だって男の子の部屋だよ?生まれて初めて。』

独り言しすぎだとも思いつつ、彼女でも緊張するのかと、少し驚いた。

 本を読んでいると、ドアがトントンとなった。

「お風呂沸いたよ?」

「ありがとう。」

僕は、自室を後にした。

 久しぶりに使った後の浴室に足を踏み入れた。

 もちろん、彼女の入った残り湯は全部捨てて、湯を貯めて入った。

 風呂の中で、ある恐ろしいことに気づいた。

 家に女子がいても別に平然としていることだ。

 普通ならば、戸惑うはずだ。だが、普通に接して普通に生活できている。

 何故なんだと不思議に思った。

 そんな疑問を抱えながら、一日は過ぎていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る