隣の黒を、光らせたい
TEAR-KUN
第1話 入学
「これから入学式を始めます。」
憂鬱なチャイムに憂鬱な音が会場を揺らした。普通ならばワクワクドキドキの新生活だったのだろう。僕は普通ではない。でも普通になりたいとは思わなかった。この生活に不満はないのである。
僕にとっての「憂鬱」は少し人とは違う。
「やあ!!!久しぶり!!!元気にしてた?!!」
でた。
彼女、矢崎真央は前の席の女子だ。いわゆる陽キャという人々か。
実は、陽キャとか陰キャとかそんなラノベで出てきそうな区別は好きではない。
だが、彼女は陽キャに分類されるとしか思えないのだ。
彼女とは小学生の時同じクラスだった。ただ彼女に会いたくない。
──僕は彼女をいじめていた。
給食を頭からかけ、バケツに入ったワックス入りの水をかけ、上履きのそこに画鋲をおいたり、そんな典型的なことをして笑っていた。
今思うと惨めだ。最悪だ。
しかも、そんなことをした相手が今僕の目の前にいる。
「よし、席替えをするぞ。」
この瞬間、ガッツポーズをして喜んだ。
早くもこの制約から逃れられる、そう思っていた。
でも、現実はそう甘くなかった。
「やあ!隣だね!」
彼女は僕の隣の席を奪いやがった。
僕は運という謎で不可思議なものを恨んだ。
この建物に入って2回目のチャイムが聞こえてきた矢先、彼女は僕に近づいてきた。
復讐されるかもしてない。ずっとハラハラしていた。
「ちょっと今日放課後屋上にきてみてよ!!いいことあると思うよ!!」
僕は焦った。なにもこんな露骨に復讐するとは思わなかった。
揺れるカーテンに遮られた太陽は元気にしていた。咲いたばかりの花はこれからも成長しそうだった。でも僕は成長を妨げられる。絶対に。
そう感じていた。
放課後、約束通り怯えながら屋上に行った。きた言葉は想像を超えるものだった。
「小学生の時から気になってたんだ。付き合って!」
僕は夕日に照らされながら頷こうとした。なぜだろうか。僕にも理由はわからない。ただ、直感的にだ。
彼女はその僕の頭を自分の頭に触れさせた。僕は彼女の体温を感じた。そうとう熱くなっている。
その後、僕は彼女になぜ告白したのか理由を聞いた。
「矢野くんが前より元気がなかったから。私のそばにいたら元気になるんじゃないかって思って。」
僕は夕日に同化した。
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