第32話 病院搬送
病院に到着すると、優美は救急処置室へと運ばれた。その間、しゅんと隆弘は待合室に通され、ただただ待つしかなかった。
数十分後、一通り検査を終えた医師が待合室にいる二人のもとにやってきた。
「先生、優美の状態は」
不安な表情で医師に問うしゅん。しゅんとは対照的に落ち着いた様子で医師が説明を始めた。
「一条さんですが、呼吸や脈等は特に異常ありません。ただ意識がいまだに戻っておらず原因も特にわかっていません。MRIでも脳に異常は見つからなくって..」
「そうですか。まだ意識が..」
うなだれるしゅん。しゅんよりは少し落ち着いた様子の隆弘が医師に質問をした。
「先生、血液検査の結果は?一条さん以外の魔力が検出されたろしませんでしたか?」
「血液..?いや、特に問題なかったが」
「そうですか..」
福田の時は体内から福田以外の魔力が検出されていたため、今回もそうではと聞いてもみたがあてが外れた。隆弘の中で少し疑問が残った。
「今日はとりあえず入院となります。遅くまで残っていただいてありがとうございます。もう、お帰り頂いて結構ですよ。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
隆弘はそう言うと頭を下げてその場を後にしようとする。しかし、隣のしゅんはその場を動こうとしなかった。
「しゅん..?」
「先生。俺優美の目が覚めるまでそばにいてもいいですか?
優美、引っ越してきたばかりで身寄りもないので..」
しゅんの意外な発言に隆弘は驚いた表情を見せたが、それを聞いていた医師は少しニッコリした。
「ええ、もちろん。そうしていただけると助かります。これから病室に上がりますので一緒にお願いします」
「ありがとうございます。」
「しゅん..」
「ありがとうな加藤。お前がいなかったら優美をこんなに早く見つけられなかったと思うよ」
不安な気持ちを必死に押さえて隆弘に礼を伝えるしゅん。
「俺は何もしてないよ。一条さんのことよろしくね」
そういうと隆弘は病院をあとにし、しゅんは医師たちと共に病室へと上がった。
病室は個室で、窓からの眺めがいい部屋だった。
ベッドで眠る優美の側にしゅんも座る。
「今晩は私が一条さんの担当看護師となります。なにか困ったことがあればいつでも言ってくださいね」
「わかりました。すいません」
看護師が病室をあとにすると、しゅんと優美の二人になった。
優美の顔を見ると深く眠っているように見える。どうして優美が、福田や水上と同じ魔力を使用できたのか。本田が薬を飲ませていないというが、それも本当かわからない。本田がつかまったことで今回の事件は解決なんだろうか。
考えることは沢山あるが、今はただ優美が目を覚めるのを祈るしゅんだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます