第31話 本日2度目の救急要請

その後も優美の攻撃は止まらず、本田も抵抗したが強大な魔力の前になすすべがなかった。

「悪かった一条。頼む、い、命だけは助けてくれ」


本田の言葉は今の優美に届かなかった。命乞いする本田に優美はさらに強力な風魔法を発動させる。


「終わった...」

太刀打ちできないことを悟り、残りの力で風魔法を発動させ最大限の防御態勢をとった。

優美の魔法が本田を襲う。しかし直撃するそのわずか数センチ手前。間一髪といったところで優美の魔法と同等かそれ以上の魔力の炎が相殺させた。しゅんだった。


「優美――」

叫び声とともにしゅんが第5演習場に飛び込んだ。


「この魔力はあの薬と同じ,,本田、お前優美に何をした!」

しゅんは怒りを抑えられず、本田に詰め寄った。


「ち、ちがう俺じゃない。追い詰められたあいつがいきなり..」


「はぁ!?何言ってんだ」


バタン!

2人が言い合っている最中に、優美は力尽きたのか意識を失ってその場に倒れた。


「優美!」

あわてて駆け寄るしゅん。呼吸があるのを確認し、ひとまず息をなでおろした。


「ふうう」

本田も自分の命が助かったことに安堵し、その場に座り込んだ。


「優美、おい優美!」

しゅんが必死に声をかけるも優美の意識は戻らない。


「しゅん!一条さん!」

隆弘も学園長を連れて、第5演習場へとやってきた。


「加藤、学園長。」


「どういう状況なんだ、説明しろ」

加藤から、優美が危ないということしか聞いていなかった摩耶には状況の理解が追い付いていなかった。


「説明はあとでする。だけど今は、優美の方が重要だ。呼吸はあるけど意識が戻らないんだ」

取り乱しながら、訴えかけるしゅん。状況の整理は後回しにして、摩耶は救急車の手配をした。


「とりあえず救急車を呼んでおいたから、二人は一条と一緒に病院へ向かってくれ」


「わかりました。先生は?」

隆弘が尋ねると、摩耶は本田の方をにらみながら答えた。


「私は本田先生から聞かなきゃいけないことがたっぷりあるからな」

摩耶の目力にびくっとした表情をすると、本田は人生が終了したかの表情でうなだれた。


「おい、優美。優美」

救急車を待つ間も、しゅんは優美を抱きかかえながら名前を呼んでいた。


「しゅん、もしかして一条さんもあの薬を..」


「わからねえ。俺が入ってきた時にはもう..」

そう言うと、しゅんは再び本田をにらみつけた。


「いや、ち、ちがう。あいつを追い詰めたら、いきなりあの薬と同じ魔力を使ってきやがったんだ。一条には薬を飲ませていない。本当なんだ!」


「その話はゆっくり聞かせてもらう。」

そう言うと、摩耶は本田を連れて行った。


ほどなくして本日二度目の救急車が、東京魔術学園に到着した。

救急隊が事情を聞くと、急いで優美をストレッチャーに乗せて、救急車内へと収容する。

しゅんと隆弘も続いて、救急車に同乗した。


不安な表情を浮かべるしゅんに隆弘が話しかける。


「大丈夫。病院でしっかり診てもらおう。」


「ああ。でも俺がもう少し早く、演習場にたどり着いていたらって思うと..」


うなだれるしゅん。隆弘もこれ以上かける言葉が見つからず、ただ優美が目を覚ますことを祈るしかできなかった。

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