第30話 覚醒

第二演習場は本校舎からそう遠くなく

隆弘はすぐに到着することができた。

電気はついておらず真っ暗だったが

一応中に入って確認する。


「人気が無いしここは外れかな。

よし、次は第三演習場。急ごう!」


誰もいない演習場で1人呟きながら

隆弘は次の目的地である第三演習場へと急ぐ。


ほどなくして到着するも、やはり第二演習場同様

真っ暗で中には誰もいなかった。


「うーん、やっぱり第五演習場かなー。

まぁ、俺1人が行っても対した戦力にはならないし

一応、学園長に知らせておこうかな」


隆弘は魔法の力こそ、しゅんや優美には及ばなかったが

冷静に物事を考え、正しい答えを出すことに長けていた。


カッコよく優美を助けに行きたいと思わないでも

無かったが、自分にできることをしっかりと考えて

行動することが隆弘には出来た。


そして、呟いた通りに1人学園長の部屋へと向かったのだった。



第五演習場には、しゅんは未だ到着しておらず

本田の攻撃を受け続けた優美は立っているのがやっとだった。


「そろそろ限界だな。悪いがお前にはここで死んでもらう」


「そんなこと、あんたに出来るのかしら?」


フラフラになりながら優美は精一杯強気で答える。


「言ったろ?金が必要だって。こんなところで

捕まってる場合じゃねーんだよ!」


本田は口から風魔法を放った。

最早ガードする魔法を発動することも出来ず

優美は直撃すると飛ばされていきそのまま倒れ込んでしまった。


そこへゆっくりと本田が近づいてくる。


「まだ意識があるか。しぶといやつだ」


そう言うと、今度は優美の上にまたがり

風を纏わせた拳で殴り始める。


「痛ッ」


非常なダメージの与え方に

優美は思わず声を上げる。


「いい加減くだばりやがれ!」


本田はもう一度拳を振り上げて優美めがけて殴ろうとする。

優美にはもう抵抗する力も残ってはいなかった。


「お願い、止めてーーー」

残りの力を振り絞ってできたことは

叫び声を上げることだけだった。


しかし、その時だった。

先程まで魔力どころか立ち上がる力さえ残っていなかった

優美から風魔法が発動されたのだった。


そしてそれは、今までのものとは比べものにならないほどの

魔力だった。


「う、うわぁーー」

その魔法を受けて今度は本田が飛ばされていく。

何が起こったのか本田には全く分からなかった。


「な、何だこの力は?」


急いで立ち上がり、優美の方を見ると

先程まで抵抗すら出来なかったはずが立ち上がっていたのだった。


「この魔力はあの薬のものと同じだ。

お前!一体何者なんだ!」


何も答えない優美。その雰囲気はまるで

今までとは別人と言わざるを得なかった。


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