第25話 女同士の戦い

放課後、ついに決戦の時がやってきた。

舞台である第一演習場はすでに大勢の生徒達で溢れている。

学年の1、2を争う美少女同士の決戦に

学園の男子達はお祭り騒ぎだった。


「おい優美、本当にやるのか?あいつはこの前の序列戦で

本戦にもいかなかったんだぞ!」


いや、原因お前な!しゅんのこの言い草に

優美はツッコミたかったが、そのために戦うと思われるのも尺だったので、普通にスルーした。


「じゃ、俺たちも上で見てるから、頑張ってね一条さん」


「うん。ありがとう!」

先程の態度とは違い、隆弘には笑顔で答える優美。


「いや、俺は無視かよ」


やや不貞腐れながら言うしゅんを優美はこれまたスルーし

会場へと向かった。


「俺たちも行こうか」


「へいへい」


あきらかに不機嫌なしゅんを連れて、隆弘もアリーナ席へと向かった。


アリーナ席に着くと下で見ていたのとは比べ物にならないほどに男達の熱気でいっぱいだった。

中には、水上レナ命とかかれた内輪を持っているものまでいる。


「まるでアイドルのコンサートだな」


「ま、噂じゃファンクラブもあるらしいからね。

ちなみに一条さんの方も、もう時期ファンクラブが新設されるって話もあるよ」


「な、なんだそれ‥」

隆弘の話にしゅんは呆気にとられていた。


会場で試合開始を待つ優美達にも、上のアリーナの熱気が伝わってくる。

「すごい人気ね、レナ!」


「あら、一条さんのファンもあの中には大勢いるのよ。

それに‥」


「それに?」


「本命に応援されてるあなたが羨ましい」


レナの言葉に優美はドキッとする。

ゆっくりと盛り上がっているアリーナ席の方を見渡すと

そこには、他の男子生徒達とは違い、やる気なさそうな表情をしているしゅんがいた。


「あんなののどこがいいの?」


「イケメンで強い!それに優しい‥」


レナの言葉を聞いてもう一度しゅんの方に目をやる。

自分が原因でこんなことになったというのに

相変わらず、やる気のない顔をしていた。


「おい、そろそろ始めるぞ」


審判を務める本田がそう言うと、優美とレナの2人にも

一層緊張感が走りはじめた。


「それではこれより、水上、一条の模擬戦を始める。用意はいいか」


ゆっくりとそして力強く2人は頷く。


「では、試合開始!」


本田の合図を聞くとレナはゆっくりと目を閉じ

両手を上へと上げ魔法を発動させる。


発生する水がレナの上げだ手へと集まって

水の塊を作り出していく。

それは攻撃的と言うより、美しいという表現が相応しかった。


アリーナで見守る生徒達も、対戦相手である優美でさえ

戦いであるということを忘れるほど、芸術的な魔法だった。


「いきます!」

そして作り出した水の塊を優美目掛けて放つ。


優美も魔法を発動させ、体に風をまとい

ものすごいスピードで、向かってくる水を避ける。


「まだまだ!」

レナも負けじと次々に水の塊を

優美目掛けて放つ。


優美の方も風の魔法で自身の移動スピードを上げ

次々と攻撃を避けていく。

ハイレベルな美少女の戦いに、アリーナもさらにヒートアップしていった。


「さすが一条さんだね。水上さんの連続する水魔法を

完全に避け切っている」


「ああ。だが水上の発動速度はかなりのものだ。

いつまでも、避け切れるとは思えないがな」



しゅんの言う通り、優美も避け続けるのに限界を感じていた。


すると、避けながらゆっくりと呼吸を整え

まとわせる風の魔力をさらに高めた。


そして次の瞬間、地面を思い切り蹴り上げると

優美は空中へと飛び上がった。


会場全体が一瞬静まりかえる。

アリーナの生徒達も対戦相手のレナでさえも

言葉を失ってしまった。


「お、おい。あれ飛んでるよな?」


「ああ。飛行石‥いや、飛行術だーー!

一条様が空を飛んでるぞーー!」


「うおーーー!!」

アリーナの生徒達は優美の魔法に

今まで以上の盛り上がりを見せた。


「あいつ、あんなことまで出来るのかよ!」


「うん。俺も初めて見るよ。

風魔法の中でも特に難しいとされる飛行術。

それを高校生で使えるなんて、さすがは一条家だよ」


アリーナの生徒達同様、これにはレナも驚きを隠せないようで、たじろいでしまう。


「まさか、飛行術なんて‥」


「今度はこっちからいくわ!」

優美は、上空から一気にレナ目掛けて突き進んで行き

接近したところで右手で作り出した風魔法を

至近距離から放った。


レナはとっさに水の壁を作り出すも

優美の魔法を防ぎきれず、風の塊が直撃した。


「うわぁーー」


アリーナの生徒達同様、これにはレナも驚きを隠せないようで、たじろいでしまう。


「まさか、飛行術なんて‥」


「今度はこっちからいくわ!」

優美は、上空から一気にレナ目掛けて突き進んで行き

接近したところで右手で作り出した風魔法を

至近距離から放った。


レナはとっさに水の壁を作り出すも

優美の魔法を防ぎきれず、風の塊が直撃した。


「きゃあーー」



体制を崩し、一気に後方へと飛ばされていくレナ。

アリーナで見ていた生徒達も、この光景には2人の実力差を感じずにはいれなかった。


「決まりだな。根本的に実力が違いすぎる」


「そうだね。水上さんも弱くは無いけど、今回は相手が悪すぎたってところかな」


見守る生徒達が、勝負は決したと感じていた。

水上レナファンクラブの生徒達も悔しそうな表情を浮かべる。


しかし、そんな会場の雰囲気を無視するように

レナは再び立ち上がった。


「分かってた。一条さんの方が強いことくらい。

だけどここまで来て、簡単には負けられない」


レナは何かを決心したようだった。

ポケットに手を入れ、中から3錠の薬を取り出した。

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