第14話 意外な決着

「あ、あなた昨日の吉田屋の!」


「げ!あんただったのか!」

少年も優美に気付いて慌てて顔をそむける。


「あんただったのかじゃないわよ!人に豚丼の会計させておいて!」


「道を教えてあげたんだ。謝礼ってことでいいだろーよ」

少年は非常に堂々としていて清々しいほどだった。

その態度に優美は心の底から怒りを覚えた。


「あのねー、特盛りのネギ玉トッピングに味噌汁まで勝手に付けておいてなにが謝礼よ!」


「よく覚えてるな。ケチケチするなよ全く」

優美の怒りは頂点に達しそうだった。勝手に人の金で食べてケチケチするなとはどういうことかと今にも殴りかかってしまいたいほどだった。


「それで、何であんたが福田と戦ってるんだ?」

話を切り替えたかったのか少年は優美に質問した。

少年のこの言葉に優美は多少冷静さを取り戻した。


「え?福田くんを知ってるの?」


「ああ、同じクラスだからな。と言っても魔力の感じが俺の知る福田とは少し違うが‥」


福田くんと同じクラス?!優美と福田のクラスでまだ会った事のない生徒は一人しかいなかった。

分かってはいたが優美は少年に名前を尋ねることにした。


「あなたの名前は?」


「俺か?月島、月島しゅん」 


「月島‥しゅん」


やはりそうだった。ということはこの少年が学園の序列1位ということになる。先程の魔法を見ると、優美も悔しいがそのことを認めざるを得なかった。


「うおーー」

雄叫びとともに福田がしゅんの炎魔法を振り払い、再び立ち上がってきた。2人ともすっかり福田の存在を忘れていた。


「何無視してんだよお前ら。おい月島、何のまねだこれは」

先程の魔法が効いているのか福田は息絶え絶えだった。

それに引き換えしゅんは非常に冷静だった。


「久しぶりだな福田。ずいぶん魔力が変わったように思うんだが。何かあったのか?」


それを聞くと思い出したかのように福田が笑い出す。

「そうだ。今の俺は力を手に入れたんだ。今なら序列1位のお前にも勝てるかもしれないぞ、月島!」


「やってみろよ、何があったが知らないけど。あまり俺を舐めるなよ」

先程優美と話していたときとは変わり、殺伐とした雰囲気がしゅんから伝わってくる。


「おいアンタ。邪魔だから少し下がってろ」


「ま、待って。どうして助けてくれるの?」

しゅんの言い草に苛立ちはしたものの、優美は単純な疑問を投げかけた。東京の人は一度豚丼を奢ったぐらいで助けてくれるのものだろうか。


「豚丼」


「え?」


「吉田屋の豚丼!あと十杯。これで勘弁してやるよ」

そう言うとしゅんは右手を上に上げて魔法を発動させ始めた。

みるみるうちに、しゅんの右手に炎が集まり始め、瞬く間に球体の大きな炎のかたまりとなっていった。

福田も魔力を高めていく。


「福田!歯ー食いしばれや!」

しゅんは作り上げた炎の塊を福田めがけてはなった。


「こんなもの打ち砕いてくれるわ」

福田もまた炎めがけて向かっていく。


「うおーーー」

叫びながら最大限の魔力によって強められた拳で、炎を打ち砕こうとする。そして、福田の拳がしゅんの炎に届くほんの直前だった。

どこからか、2人のいる方向とは全く別の角度から

紫色の魔法による光線がしゅんの炎めがけて飛んできたのだ。

そしてその光線はしゅんの作り出した巨大な球体の炎を一瞬のうちに相殺した。その反動で福田も後方へと飛んでいく。


今度は何事だろうか。優美と福田の対決、そこにまた新たな参戦者の登場なのだろうか。優美は理解が追いつかないでいた。

しかししゅんの反応は優美のそれとは違うものだった。


「チッこの魔法は‥」

この魔法、その口ぶりからどうやらしゅんには術者の見当がついているようだった。ゆっくりと術者の方に目をやる。


優美もまたその視線の先に目をやった。

するとそこには1人の女性の姿があった。

全身黒いドレスのような姿でその手には黒い日傘のようなものがある。金髪のロングヘアーで自分たちよりはさすがに年上に見える、大人の女性だった。

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