第13話 絶体絶命

優美と福田の戦いはものすごい魔力のぶつかり合いだった。

街から少し離れているとは言え、行き交う人の中には何人かこの大きな魔力のぶつかりに気付いていた。そしてその中でも数名の強力な魔導士たちは、福田の違和感ある魔力を感じ取っていた。


「おいおい、もう終わりか?一条のお嬢様」

優美の風魔法をことどこく打ち破り、福田は攻撃を浴びせ続けていた。

優美は立っているのがやっとだった。


「それにしてもすごい力だ。まさかあの一条家の跡取りを、ここまで圧倒できるとははな。」


「ど、どうやってそんな力を手にしたか知らないけど、あんたなんかに負けるわけにはいかない」


「もう飽きたよ、お嬢様の戯言は。そろそろ終わりにさせてもらうぜ」

そう言うと福田は魔力を拳にこめる。

そして優美の方めがけて突っ込んでいった。

優美も最後の力を振り絞って風の壁を展開する。


「もういいかげんうんざりだよ!そのかぜは!」

散々破られた優美の風魔法。きっとこれも簡単に破られる。

優美は覚悟を決めてガードの体制をとり静かに目を閉じた。


「ぐ、ぐわぁーー」

すると優美が思っていたのとは違った福田の声が聞こえてきた。何が起こったのだろう。

恐る恐る優美は目を開ける。するとどういうわけか福田が炎に包まれているのだ。しかもとんでもない魔力の炎魔法だ。

何が起きているのかさっぱり分からなかった。


「おい、大丈夫か?」

そう言いながら1人の少年が優美に歩み寄ってきた。おそらくこの炎魔法を発動した者だろう。


「ええ、大丈夫よ」


そう言ってその少年の顔を見た瞬間、優美に衝撃が走った。

そこにいたのは昨日吉田屋でご飯を食べ終わるといなくなり

会計を優美にさせたあの少年だったのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る