及ばざる魔法は科学の如し

神在月

第1話

「過ぎたる科学は魔法の如し」


「え、なに? どしたの急に」


 私が唐突に放った言葉に彼女は怪訝そうな……というか「どうした、頭大丈夫?」みたいな顔で私を見る。そんな顔されるとさすがにちょっと傷つくんですけど。


「いや、この光景を見たら唐突にそういうことを誰かが言ってたのを思い出してさ」


 私と彼女のいるこの部屋には作り物の星空が広がっている。ノリと勢いで買ってしまった安物なのでプラネタリウムには及びもしない出来栄えだ。興味本位とはいえ、もう少しレビューの高いものを買っておけばよかったかもと絶賛後悔中。


「ほら、プラネタリウムって科学で星を作り出してるわけじゃない? 星を作り出すって魔法じゃん」


「まあ確かにね。今じゃ光を灯すのも火を起こすのも、空を飛ぶのだって科学の力で一瞬だし」


「そうそう、私は科学の発展を喜び感謝するよ。ああ、エジソンありがとう。ライト兄弟万歳」


 私が大仰な仕草で過去の偉人を崇めていると、彼女は肩をすくめて部屋中に広がる星屑を指す。


「じゃあ、市販のプラネタリウム以下のこれは?」


「うーん、及ばざる魔法は科学の如し?」


 ぷっ、と吹き出して彼女は笑い出した。それにつられて私も笑う。


 私達はそのまま出来損ないの魔法の中で笑いあった。


 次は科学以上の出来の魔法を買いに行こう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

及ばざる魔法は科学の如し 神在月 @one64

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る