第684話 クロスステッチの魔女、綿摘みを終える
魔法で綿を収穫しては、魔法で砂糖菓子を砕いて撒き、魔力を補う。そしてまた、別の魔綿の木……ではないかな、草?……を魔法で育てる。それを私が《魔女の箱庭》で育てている株の全部にやり終えると、さすがに疲れてしまった。気づくと、また夜が明けている。連続で徹夜をしてしまっていたらしい。
「マスター、四日もお休みになられていないのはよくない気がします。そろそろ一度、眠られてください。僕達がその間、綿の実を干しておきますから」
摘んだ綿の実は、数日天日に干しておかないと良い糸にできない。なので、代わりに干しておいてくれるのはありがたかったけれど……四日?
「昨日と今日で二日じゃないの?」
「いえ、魔綿を魔法で育て始めて、もう丸三日経過しています」
「えっ」
まったく気づかなかった。アワユキ、キャロル、ラトウィッジの三人も、ルイスの横でこくこくと頷いている。私が作業に没頭しているから、お茶を差し入れたり先に摘んだ綿の実を干したり、細々と働いてくれていたらしい。
「そっかー……みんな大丈夫? 疲れてない?」
「大丈夫です、砂糖菓子を適宜、食べていたので」
「あるじさまの様子を見て、こっそり交代で休んでたりもしたのー」
「ですから心配なのは、主様のことですわ」
「あの、やってほしいことあったら、やりますので……!」
みんなにそう言ってもらえたので、摘んだばかりの綿の実を干しておいてもらうように頼んだ。頷いてくれて手分けして外へ行く様子を横目に、砂糖菓子を砕いて魔力を補填した魔綿畑に「お疲れ様」と声をかける。
「急にこんな魔法使って、悪かったわね。お互い、ゆっくり休みましょうか」
もちろん、返事はない。私は《箱庭》の蓋を閉じて、あくびをひとつすると自分のベッドに潜り込んだ。四日も放り出していた割には、枕がしっかり振るってあるのは誰の仕事だろう。良いことをしておいてくれたものだ。褒めてあげないと。
……ということで、みんなが戻ってくるまで起きているつもりだったのだけれど、やはり疲れていたらしい。柔らかいベッドに横になってしまうと、泥のように自分がとろけていく錯覚を感じた。
(これは……やっぱり疲れてたのね、私。多分絶対、みんなが戻ってくる前に寝ちゃうわ)
考えてみれば、初めての魔法を刺して何回も使った。それで急激に育てた時に、私自身の魔力も少し吸われている。そしていつになく、沢山の砂糖菓子を魔法で作った。
糸紡ぎの前に眠っておいた方がいい。そう思うより早く、私は眠りに落ちて行った。
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