第671話 クロスステッチの魔女、色々と知る

 キラキラと自ら輝く、美しいカケラや《核》達。こうして見比べてみると、色が混ざってたりしているカケラは原石のようにあまり加工していないのに対して、宝石を磨くように磨かれているのが《核》だとわかる。


「こうも沢山のカケラや《核》を見られる機会なんて、中々ないでしょうね」


「完全に趣味と道楽で、ここまで集めているからね。市に来る核屋も、在庫を全部持ってはこないだろうし」


「魔法で家からそのまま運んできたとしても、すべてを飾りはしないだろうねえ」


 どんな魔法ならそんなことができるんだろう、とお師匠様の言葉を聞いて不思議に思う。もちろん私の知らない魔法はこの世にいくらでもあるけれど、そんなことができる魔法なら、私も使えるようになりたい。


「お師匠様、私にもできますか?」


「難しい魔法なわけじゃなくて、ひとつひとつは簡単な魔法の組み合わせだよ。等級としてはあんたも使えるから、そのうち自分でやってみるといい。どうせ、全部は読めてないんだろう?」


「そうですね、本の動かせるページをまだ、全部は読めてないです」


 今もカバンには入っている、分厚い魔法の本のことを思い出しながら私はそう答えた。三等級までの魔法の組み合わせなら、空間を本当に繋げてはいないはずだ。そういう魔法は、二等級になってからではないと扱えない。《魔女の箱庭》や《容積拡大》のカバンなんかは、等級が下の魔女がおかしな改造をしないように封がされている。私のような魔女にできるのは、『魔力を流すか流さないか』の二択だけだ。


「十年以内には全部読んで、もう少し扱えるようにおしよ。あれをすべて修得しないと、二等級は狙えないから」


「がんばりまぁす」


「向上心のある弟子じゃない。二等級になると、空間の魔法が使えるようになるのは大きいね。まあ、最初はアルミラとやるのがいいと思うよ」


 イルミオラ様にもそう言われて頷いた。


「マスターならできますよ」


 ルイスは私を信じきった目をしている。そんな目をされたら、私を信じてくれる子のためにも立派な魔女にならなくちゃ。


「帰ったらお裁縫をいくつかやるだけじゃなくて、また魔法の勉強もしなくちゃ」


 ラトウィッジに着せる服とかもなんとかしないといけない。メリンダ様にこの子を見せるという話をしていたのが本当になった時に、粗末な格好はさせられないから。でもこれも似合うんだよなあ。

 そんなことを考えたりもしつつ、イルミオラ様から気になったカケラの物語を聞く。そんなことをしていたら、お師匠様が「そろそろ帰るかね」と言い出した。

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