27章 クロスステッチの魔女と引きこもってみる日々

第591話 クロスステッチの魔女、洗濯日和を過ごす

 家に帰った私は、しばらく家でゆっくりすることにした。お財布の中身を貯金用の壺に開けたり、カバンの中身を整理したり、部屋の大掃除をしたり。やることは沢山あったし、また薪を割ったり保存食を干したりの準備も少しずつ始めていた。まだ秋の始めとはいえ、空いている時にやっておいた方がいいに決まっているから。


「後は、この石が何かを調べたいんだけど……挙げてみたらやっておきたいことが多すぎて、しばらくは無理そうね」


 お師匠様に巡礼を終えた報告に行った時、私は火の精霊からもらった石を見せた。すると、分厚い本を渡されて、自分で調べろと言われたのだ。精霊樹と同じく、人には言うなと念押しされたうえで。


『本当にあんた、迂闊なことするんじゃないよ。しばらくは家で、大人しくしてなさい』


『はあい』


 精霊樹の観察をしたり、糸紡ぎに機織り、やることは少し探せば山のようにあった。だから、大人しくしていろ、と言われたら、家に籠ってやることをしばらくやることにした。


「マスター、今日は何をされるんですか?」


「今日はお天気がいいし……服の虫干しに、布団洗い、それから機織りね」


 洗うのは私の手でないと難しいけれど、干すのはみんなに手伝ってもらえていた。布団のような重い物はともかくとして、服を干してもらえるのはありがたかった。こういう時のために飛ぶ魔法を使いこなしてもらっているわけではないとはいえ、本人達が役に立てたと言って喜んでいるのだ。


「じゃあ、お日様が高くなる前に干しちゃえるようにがんばろー!」


「おー!」


 小さく拳を突き上げて、私達は大きな盥で近所の川から水を汲んでくる。盥ふたつにたっぷりと水を汲んで家の前の草地に置き、先にあまり汚れてなさそうな布類から洗うことにした。服を洗う石鹸をちょっと贅沢に削って盥の片方に溶かし、踏み洗いで綺麗にしていく。


「アワユキも! アワユキもふみふみしたい!」


「やったらアワユキも丸洗いにしないといけないわよー」


「むうー!」


 しばらく踏んで洗った後、綺麗な水の方の盥ですすいでいく。すすいで絞ったら、ルイスとキャロルが二人がかりで飛んで、木の枝から枝に渡した紐へひっかけて行った。


「空模様はどう?」


「雲は全然ないです。ガッツリやっちゃいましょうマスター!」


「みんなの服やリボンも洗っちゃいましょうか」


 私の服や布団と一緒に、三人の小さな服や布団も洗って干す。何か手伝いたい!とアワユキが言うので、洗濯ばさみをしたとはいえ、風で洗濯物が飛んで行かないかを時折見ておいてもらうことにした。

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