第516話 中古《ドール》、色々と聞かれる

「ルイス、あなたを作ったのはあなたのマスターですか?」


「いえ、僕は中古品として売られていたところを買い取られました。マスターは僕のことを、青核サファイア半月級と聞かされていたそうです。」


 ゆるく首を振って訂正する。目の前の《ドール》は淡々と「そうでしたか」と言って、また別の質問を投げかけてきた。


「マスターはどのような魔女ですか?」


「僕のような中古品を初めての《ドール》にするような物好きで、優しくて、お人好しです。僕を安く買えたからと言って、僕用の服や家具を大量に買い込み、結局新品を買うのと大差ないお金を使っていたと言われてました」


「買い込みすぎるのは魔女には珍しくない話ですね」


 やっぱり。そこはそんな気がしていた。


「あなたのマスターは、四等級にしては珍しく複数の《ドール》をお持ちですね。彼女達が来た経緯を、正直に聞かせてください。嘘は許されません」


「えっと……アワユキは、マスターが拾った雪の精霊を最初はユキウサギに入れてました。それを魔兎の革のぬいぐるみに詰め替えたのが、アワユキです。それからキャロルは、僕の核が分裂というか、分かれかけてた時に、その一部をあの子にしたと言ってました。だから多分、キャロルも僕です」


「キャロルのことは、あなたのマスターがお一人でされたことですか?」


「いえ、マスターの師がご指導をしておられました」


 マスターの呼び方が移って『お師匠様』と言いかけたのを、なんとかギリギリで阻止。そんな攻防を怪しまれないように、話すことができたと思う。


「あなたは刺青が複数ありますね? 刻んだのはあなたのマスターですか?」


「お腹のものは、誰がいつ刻んだかわかりません。僕が買われた時には、もうこんな風だったと言われました。マスターの師、アルミラ様も証言いただけると思います。腕の刺青は、僕が魔力を暴走させてしまったことへの封印措置として、刺青の魔女様に刻んでいただきました」


 その言葉には、流石に彼女も驚きの顔を見せた。大事なのだろうとは、僕もわかっている。


「魔力の暴走は、あなたの機能上の欠陥ですか?」


「いえ、僕にもよくわかりません。あの時はマスターが危ないと思って慌ててしまい、気づいたら暴走していたようで……」


 何かをサラサラと書きつけられる。何を書いてるのか、少し怖い。


「あなたは、もう一度同じ場面になったら今度はどうしますか?」


「……今度は理性をもって状況を見極め、マスターの助けになりたいと思います」


 それが正解かはわからない。けれど彼女はひとつ頷いて、「あちらの部屋に戻ってください」と質問を終えた。

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