第484話 クロスステッチの魔女、大掃除する
それから家に帰れたのは、半月ほど後のことだった。秋を丸々かけてニョルムルに渡って以来だから、半年以上は帰っていない。
「あー……やっと帰ってこれたわね!」
「また大掃除をしないといけませんね、マスター」
「お手伝いしますわ」
「アワユキもやるー!」
家に帰ってみると、埃がそれなりに積もっていて掃除のし甲斐がありそうだった。今回も精霊を呼んで手伝ってもらおうと思うけれど、その前に荷解きをしないと。
「まずは全部の窓を開けてきて頂戴」
「「「はーい!」」」
みんなで手分けをして窓を開けてきた後、風の精霊を呼びだす魔法を刺繍する。前に家の中をめちゃくちゃにするほどの大風を吹かせてしまった反省から、今回は小さく刺繍をした。魔力を込め、精霊を呼びだす。今回は、ちゃんと精霊にいい感じの風を吹かせることができた。埃と淀んでいた空気が一気に抜けて、爽やかな空気に入れ替えらえる。
「すっきりしたわねー」
「ええ、よかったです」
「あるじさま、次は何をしますか?」
「そうねえ。じゃあこのまま、大掃除とお洗濯をしたいから……掃除を手伝って頂戴な」
小さなはたきや雑巾を余り布で軽く作って、三人に手渡す。体が小さくて空も飛べるものだから、私の手の届かない窓枠の上の方から埃を落としてくれたりもする。
「アワユキ、埃だらけにならないように気を付けるのよ。ルイスやキャロルが埃を落とした後に、雑巾で拭いてあげて」
「わかったー!」
いい子のお返事だけれど、ちょっと心配だった。ベッドの上の布団類を洗うべく抱えながら、最悪、アワユキもまるごと洗おうなんて計画していた。
「私は洗濯をしてくるから、お掃除続けててね」
そう言って大きなたらいと一緒に家を出て、近くの小川でまとめて洗い物をした。今日はお天気がいいから、半日もあれば乾くだろう。……乾かなかったら、魔法で何とかできると思う。いくつか心当たりがある。
「あー、ニョルムルでもうちょっと石鹸を買っておけばよかった。それに、あの綺麗な杯……また行かないと」
あの街は珍しいつくりをしていた。大体が商売をしている街だなんて、都にだってあまりない。けれどいつか、あの方法に気付いた人間達があのような街を増やすのだろう。次の冬……か、その次の冬には、またあそこに行きたいと思いながら、石鹸で布団をざぶざぶと洗った。いい匂いがして、虹色の泡が広がる中を濯いでいく。家の窓から見える木の枝に、布団を干した。
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