第450話 クロスステッチの魔女、先に帰される
お師匠様や魔女様方はまだ作戦会議があるとのことで、お守りを大量に持たされた私は帰されることになった。
「いいんですか? 話とか、聞いていなくて……」
「四等級の耳に入れられない魔法とかがありますので」
「宿に戻って試験のお勉強でもしておいで」
《裁きの魔女》様とお師匠様にそう言われ、私に話せない話ならば仕方ない、と私も納得した。四等級では使ってはいけない魔法、知ってはいけないものがこの世にはあることを知っている。
「……わかりました、失礼します」
私は大人しく下がることにして、ルイス達を連れてお師匠様の魔法でニョルムルの中心街に戻った。いつもの宿に戻ると、マルヤに早速お風呂に入りたい旨を伝える。部屋のお風呂を入れてもらって、ゆっくり浸かってから勉強をすることにしたのだ。
「マスター、魔法のお勉強はちゃんとしないといけませんね」
「本当にそうだわね。やっぱり上に上がって、できることが増えないと……」
魔法の勉強に本をめくりながら、私は今日は魔法の実技ではなく座学をすることにした。魔法の歴史を紐解くのに、頑張って字を読んでいく。
「大魔女ターリア様の、魔女組合発足をもって……現代魔女の、制定とする。それより古い魔女は、皆……古代魔女と呼ばれ。発起人の、ターリア様を、特級大魔女、と、する」
少し古い文章だから、読むのはどうしてもつっかえつっかえになる。私は読んだことを自分のわかりやすい言葉に羊皮紙へ書き直して、文章を連ねていくことにした。横の連帯もなく、バラバラに生きていた古代魔女の時代。ターリア様が「魔女の連帯」を訴え、魔女組合が発足した現代魔女初期の時代。人間との間にエレンベルクを作り、魔女の国としても認められたという話。四等級になった際にも多少勉強したけれど、もう少し内容が詳しくなっている。きっと二等級や一等級の勉強になれば、もっと詳しい内容を覚えないといけないのだろう。もちろん、《裁縫鋏》のことなんて、どこにも書いていなかった。
「……もっと上になれば、もっと沢山のことを知れるようになるかな」
私が知らされていないことを、知らないまま生きていくことはできない。《裁縫鋏》の魔女や『眠れる森の薔薇』が、向こうから来るのだ。呑気にしていたら自分の身も守れないし、今回のように上級魔女様方へ連絡を取れるわけではないだろう。
「そうしたらちゃんと勉強しないといけませんね、あるじさま」
「頑張るわぁ」
ルイスが濃い目に淹れてくれたお茶で、勉強がはかどった。
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